在留カードの携帯義務と14日以内の届出|外国人が注意すべきトラブルを元捜査員が解説
元捜査員の行政書士が見てきた現場のリアル
在留カードをめぐって外国人が注意すべきトラブル
「軽い気持ち」が大きな問題になる瞬間を、入管法違反事件の捜査現場で見てきた視点から整理します。
はじめに
外国人の方から、在留カードについて次のようなご相談を受けることがあります。
「近くのコンビニに行くだけでも、在留カードを持たないといけませんか」
「引っ越したあと、住所変更を忘れていました。更新に影響しますか」
「会社から“なくすと困るから預かる”と言われました」
「友人に在留カードの写真を送ってしまいました。大丈夫でしょうか」
採用担当者の方からも、「在留カードを確認したつもりだったが、どこまで確認すればよいのか不安」という声を聞くことがあります。
在留カードは、単なる身分証ではありません。日本に正規に在留していること、どの在留資格で、いつまで、どの範囲で活動できるのかを示す、非常に重要なものです。
この記事では、私が警察官として入管法違反事件の捜査に携わっていたときに見てきた現場感も踏まえ、外国人本人と企業が特に注意すべき在留カードのトラブルを整理します。あわせて、令和6年入管法改正による不法就労助長罪の厳罰化についても触れます。
本記事のポイント
| 項目 | 実務での注意点 |
|---|---|
| 在留カードの携帯 | 中長期在留者は在留カードを常時携帯する義務があります。コピーやスマホ画像では足りません。 |
| 14日以内の届出 | 住所変更、氏名・国籍等の変更、所属機関の離脱・移籍、紛失時の再交付などは期限管理が盲点になります。 |
| 貸し借り・画像送信 | 友人に貸す、写真を送る、名義を貸す行為は、本人の意図以上に重大な犯罪や不法就労に利用される危険があります。 |
| 偽造カードの所持 | 「使っていない」「念のため持っていただけ」では済まないことがあります。行使目的があれば、偽造・変造在留カードの所持は処罰対象です。 |
1. 「ちょっとそこまで」で在留カードを持たないリスク
警察官をしていた頃、街頭で職務質問をした際に、在留カードを携帯していない外国人の方は少なくありませんでした。
本人としては、「家が近いから」「コンビニに行くだけだから」「スマホに写真があるから」という感覚です。その気持ちはよくわかります。日本人でも、近所に出るときに財布を持たないことはあります。
ただ、在留カードについては話が違います。
入管法第23条第2項は、中長期在留者について、在留カードを受領し、常に携帯しなければならないと定めています。また、警察官等から提示を求められた場合には提示義務があります。16歳未満の外国人については携帯義務の例外があります(出入国管理及び難民認定法第23条、e-Gov法令検索由来の法令掲載情報より)。
罰則として、在留カードを携帯しなかった場合は20万円以下の罰金、提示を拒んだ場合は1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金の対象となります(出入国管理及び難民認定法第75条の2・第75条の3、e-Gov法令検索由来の法令掲載情報より)。
もちろん、在留カードを持っていないだけで、直ちに逮捕されるという話ではありません。実務では、常習性や悪質性、本人確認の状況などを見ながら判断されます。
しかし、現場で起きるのは「その場で注意されて終わり」ではありません。
在留カードを持っていないと、警察官はその人が正規に在留しているのか、在留期限が切れていないか、別の事件に関係していないかを確認しなければなりません。自宅が近いからといって、その場で一緒に家まで行って確認して終わるとは限りません。警察署で入管照会を行い、氏名、在留資格、在留期限等の確認が取れるまで時間がかかることもあります。
ここが盲点です
在留カードのコピーやスマホ画像は「携帯」にはなりません。原本を持っていなければ、不携帯と判断され得ます。
行政書士に申請を依頼し、一時的に在留カードの原本を預ける場合は、預かり証を受け取り、外出時にはこれを携帯しておくべきです。預かり証があればすべて問題なし、という意味ではありませんが、少なくとも事情説明の材料になります。
実務感覚としては、「在留カードを持っていなかったこと」自体よりも、その後の説明があいまいだったり、過去にも同じ注意を受けていたり、生活圏からかけ離れた場所において不携帯だったりする場合に、厳しく見られやすくなります。
たかだか近所なのに、ではなく、自分を守るために持つ。これが鉄則です。
2. 在留カード関連の「14日以内」ルール
在留カードのトラブルで、本人に悪気がないのに問題化しやすいのが届出義務です。代表的なものは次のとおりです。
| 手続 | 期限 | 届出先・申請先 |
|---|---|---|
| 新たに住居地を定めた場合 | 住居地を定めた日から14日以内 | 市区町村 |
| 引っ越した場合 | 新住居地に移転した日から14日以内 | 市区町村 |
| 氏名、生年月日、性別、国籍・地域の変更 | 変更日から14日以内 | 地方出入国在留管理官署 |
| 所属機関の離脱・移籍・名称変更等 | 事由発生日から14日以内 | 地方出入国在留管理官署、郵送、電子届出 |
| 在留カードの紛失・盗難・滅失 | 事実を知った日から14日以内 | 地方出入国在留管理官署 |
住居地については、入国後に住居地を定めた日から14日以内、転居した場合も新住居地に移転した日から14日以内に届出が必要です。転入・転居届の際に在留カードを提出すれば、入管法上の住居地届出をしたものとみなされますが、在留カードを持参し忘れて住民票の手続だけが先に済んだ場合は、別途届出が必要になる点が実務上の落とし穴です(出入国在留管理庁Q&Aより)。
住居地以外の記載事項、つまり氏名、生年月日、性別、国籍・地域に変更があった場合も、変更日から14日以内に地方出入国在留管理官署で届出が必要です(出入国在留管理庁HPより)。
所属機関に関する届出も見落とされがちです。たとえば「技術・人文知識・国際業務」「技能」「介護」「留学」など、一定の在留資格では、勤務先・学校などの離脱、移籍、名称変更、所在地変更等があった場合、14日以内に届け出る必要があります(出入国在留管理庁Q&Aより)。
届出をしなかった場合は20万円以下の罰金、虚偽届出は1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金の対象となることがあります。また、住居地の届出をしない、虚偽の住居地を届け出るといった場合には、在留資格取消しの問題にもつながります(出入国在留管理庁Q&Aより)。
入管が見ているのは「うっかりかどうか」だけではありません
更新や変更申請の場面では、過去の届出履歴、住民票、課税証明書、雇用契約書、退職日、入社日などが横並びで見られます。住所変更日と届出日が大きくずれている、退職しているのに所属機関届出がない、申請書の職歴と届出履歴が合わない、という形で表に出てきます。
申請準備の段階でまず時系列を作るという方も多いかと思いますが。いつ入国し、いつ転居し、いつ退職し、いつ入社し、どの届出をしたのか。ここを整理すると、申請書の弱点がかなり見えてきます。
14日ルールは、単なる事務手続ではありません。次の申請で「この人は在留ルールを守って生活しているか」を見られる材料になります。
3. 在留カードを貸す、借りる、写真を送る危険
在留カードは、本人だけが使える身分証明書です。それにもかかわらず、現場では次のような話が出てきます。
- 友人から「アルバイトを掛け持ちしたいから、カードを貸して」と頼まれた
- 「カードをなくした友達のために、写真だけ送ってあげた」
- 同郷の知人に「銀行口座を作れないから名義を貸して」と頼まれた
- 雇用主や斡旋業者から「なくすと困るから会社で預かる」と言われた
軽い親切のつもりでも、これは非常に危険です。
入管法第73条の6は、他人名義の在留カードを行使する行為、行使目的で他人名義の在留カードを提供・収受・所持する行為、行使目的で自己名義の在留カードを提供する行為について、1年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金を定めています(出入国管理及び難民認定法第73条の6、e-Gov法令検索由来の法令掲載情報より)。
実際に、オーバーステイの外国人が知人の在留カード画像をスマホに保存し、「カードは持っていないが画像はある」と言って逃れようとする場面を何度も経験しました。
貸した本人に「法令違反を助けるつもり」はなくても、相手が不法就労、携帯電話契約、口座開設、詐欺などに使えば、事情聴取の対象になります。在留資格の更新・変更の場面でも、在留状況の不良として不利に見られる可能性があります。
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守るべきことは、難しくありません
✓在留カードを他人に渡さない
✓写真を撮らせない、送らない
✓SNSに載せない
✓「ちょっと見せて」と言われても、自分の手から離さない
✓雇用主や寮の管理者に預けない
「会社で管理しておくから安心」という言葉に注意
特に、現在はほとんど無いかもしれませんが、会社や受入れ側が在留カードを「保管する」という話には注意してください。技能実習の分野では、監理団体や実習実施者等が技能実習生の旅券・在留カードを保管することは禁止されていますが、本人の移動や退職を事実上縛る手口になっていたという事例も多くありました。
4. 偽造在留カードは「持っているだけ」でも問題になる
偽造在留カードというと、不法滞在者や最初から悪質な人物だけの問題だと思われがちです。しかし、捜査現場では、正規滞在者が偽造在留カードを持っているケースもありました。
理由を聞くと、
- 今の在留資格では働けない業種で働きたかった
- 在留期限が近いが、帰国したくなかった
- 使う予定はないが、SNSで安く買えたので持っていた
という、本人からすれば安易な動機です。しかし、法はかなり重く見ています。
入管法第73条の3は、行使目的で在留カードを偽造・変造した者や、偽造・変造在留カードを行使した者、提供・収受した者について、1年以上10年以下の拘禁刑を定めています。また、第73条の4は、行使目的で偽造又は変造の在留カードを所持した者について、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金を定めています(出入国管理及び難民認定法第73条の3・第73条の4、e-Gov法令検索由来の法令掲載情報より)。
使う予定がなく実際に警察官などに提示しなかった場合は「行使の目的」にあたるのか争いはありますが、通常は行使目的があると判断されることが多いので、当たり前ですが、持っていいものではありません。
「まだ使っていない」は、安心材料にはなりません
SNSで簡単に買える、安い、周りも持っている。このような言葉に流されると、在留資格どころか、日本での生活そのものを失うことになりかねません。
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よくある質問
Q1. 子供も在留カードを携帯しなければなりませんか?
いいえ。16歳未満のお子様に在留カードの常時携帯義務はありません。「特定在留カード」に変わった場合も、16歳未満については常時携帯義務が免除されます。
ただし、16歳になった後は話が変わります。16歳以上の中長期在留者は、在留カードを常に携帯する必要があります。特定在留カードも在留カードであるため、16歳以上であれば常時携帯義務の対象になります(出入国在留管理庁Q&Aより)。
Q2. 更新申請中で在留期限が過ぎたカードは、もう無効ですか?
在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請を在留期間内に行っている場合、一定の場合には、従前の在留期間満了後も最長2か月間、引き続き在留できる「特例期間」があります。
この場合でも、在留カードは引き続き携帯してください。カード裏面に申請中である旨が記載されていることがあります。採用担当者の方は、表面の在留期限だけを見て「期限切れ」と即断せず、裏面の記載、申請受付票、本人の説明、必要に応じた入管への確認をあわせて見てください。
実務では、表面だけをコピーして裏面を見ていない、という確認漏れが起きがちです。恥ずかしながら現場の警察官でもたまにあります。
▶ 更新・変更が不安な方へ
Q3. 在留カードを失くしたとき、まず何をすべきですか?
まず、紛失や盗難の状況に応じて、警察署や交番で遺失届・被害届を出してください。そのうえで、事実を知った日から14日以内に地方出入国在留管理官署で再交付申請を行います。
大事なのは、「そのうち出てくるかもしれない」と放置しないことです。悪用されるリスクがあることは当然ながら、長期間放置していると、行政から届ける意思がなかったとみられる可能性があります。
再交付までの間は、警察で受け取った受理番号の控えや、入管での申請受付に関する資料を保管し、外出時にも事情を説明できるようにしておくと安心です。
Q4. 採用担当者は、在留カードのどこを最初に確認すべきですか?
まず見るべきなのは、在留資格、在留期間、就労制限の有無、資格外活動許可欄、本人の顔写真と実際の本人の一致です。
特に見落とされやすいのが、裏面の資格外活動許可欄です。留学生や家族滞在の方は、資格外活動許可があるか、週28時間以内などの範囲を超えないかを確認する必要があります。表面だけを見て「在留期限が残っているから大丈夫」と判断するのは危険です。
まとめ
在留カードをめぐるトラブルは、最初から悪意を持って始まるものばかりではありません。
「近くだから持たなかった」
「友達に頼まれて写真を送った」
「住所変更を後回しにした」
「会社に言われるまま預けた」
こうした小さな油断が、警察署での長時間の確認、入管への照会、更新・変更申請での不利益、場合によっては刑事事件につながります。
私が現場で何度も感じたのは、違反が起きた後に取り返すより、手前で正しい運用を作る方が圧倒的に本人も企業も守れるということです。
外国人本人の方は、在留カードを「持っているだけのカード」ではなく、日本で生活するための基礎として扱ってください。企業の方は、採用時の確認を一度きりの作業にせず、記録に残る社内ルールとして整備してください。
こんなときは、早めにご相談ください
✓住所変更や所属機関の届出を忘れていて、次の更新が不安
✓採用予定者の在留カードの確認方法に不安がある
✓すでに雇用している外国人社員の在留管理を見直したい
不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。小さな違和感の段階で整理できれば、選べる道はまだ多く残っています。
※本記事は執筆時点の法令・公表情報に基づいて作成しています。法令・運用は変更されることがありますので、実際の手続や対応にあたっては最新情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。
