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就労資格証明書は取るべきか|技人国の転職で仕事内容が変わる場合

元警視庁入管法捜査員の行政書士が解説

就労資格証明書は「許可証」ではなく、次の更新までの時間を買う制度です

「前職はシステム開発でしたが、うちでは営業と兼務になります。ビザはこのままで大丈夫でしょうか」

「14日以内の届出は本人に出させました。会社としては、これで終わりですか」

「就労資格証明書というものがあると聞きました。取らないと、まずいですか」

退職と入社の届出まで済ませたご担当者様から、次にいただくのがこのご相談です。届出は「転職した事実を報告する」手続きであって、「新しい仕事がその在留資格でできるか」を入管が判断してくれるものではありません。ここに、半年後や1年後に問題になってしまう空白が生まれます。

先に結論を申し上げます。就労資格証明書は、取らなくてもいいものです。入管法にも「交付することができる」と書かれているだけで、義務ではありません。ただし、職務内容が前職から変わる転職では、取っておいたほうが安全です。転職先での仕事が在留資格の範囲に収まっているかどうかは、取らなければ次の更新申請のときに初めて審査されるからです。おそらく、その時には、在留期限が目前に迫っているはずです。

私は行政書士になる前、警視庁で約20年間勤務し、そのうち約10年間は入管法違反事件の捜査に従事してきました。その経験から申し上げると、企業が一番困るのは「不許可になったこと」そのものではありません。不許可が分かった時点で、打てる手がほとんど残っていないことです。就労資格証明書は、その手を打つ時間を買う制度だとお考えください。

※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。入管庁の公表資料から確認できる内容と、筆者の実務経験に基づく見立ては区別して記載しています。個別の事案は事情によって結論が変わります。実際の対応にあたっては最新の公式情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

この記事のポイント【先に結論】

▶ 就労資格証明書は入管法19条の2に基づく制度です。条文は「交付することができる」という書き方で、申請するかどうかは本人の任意です。持っていなくても、在留資格の範囲内であれば適法に働けます。

▶ その方が行うことのできる就労活動が在留カードなどから明らかな場合に、証明書を提示・提出しないことだけを理由として不利益な取扱いをすることは、入管法19条の2第2項で禁止されています。一律に採用条件とすることは避けてください。

▶ 交付されても在留期間は延びません。意味をなすのは次の更新です。転職先での職務内容が在留資格に該当するかどうかを、期限に余裕のあるうちに入管へ確認しておける。これが本質的な価値であり、同じ在留資格の範囲内で職務内容が変わるケースが、最も取得の価値が高い場面です。

▶ 在留資格そのものが変わる転職(例:民間企業の通訳から中学・高校の語学教師へ)は、就労資格証明書ではなく在留資格変更許可申請が必要です。ここを間違えると、許可前の就労が不法就労になります。

▶ 交付手数料は窓口2,000円、オンライン1,600円(2026年10月1日以降のオンライン申請は決済手数料220円が加算され1,820円)。「該当しない」という結果の場合、交付手数料は発生しません。標準処理期間は、入管庁の表示で「当日(勤務先を変えた場合などは1か月〜3か月)」とされています。「など」とあるとおり、勤務先が同じなら必ず当日、というわけではありません。在留期限まで6か月以上あるうちに動くのが現実的です。

▶ 2026年10月1日から、在留資格変更・在留期間更新・永住許可の手数料が大幅に改定されます。就労資格証明書の交付手数料は据え置きです。「やり直し」のコストだけが上がる、という構図になります。

▶ ただし、いいことばかりではありません。「該当しない」という結果は、会社が自ら不適合の可能性を入管に示すことにもなります。だからこそ、出す前に見立てを立てることが重要です(第4章で正面から説明します)。

1.就労資格証明書とは|「許可証」ではなく、任意の確認制度です

まず、名前から受ける印象を一度外してください。「証明書」という言葉から、これがないと働けない許可証のように受け取られがちですが、そうではありません。

根拠は入管法19条の2です

条文は、出入国在留管理庁長官は外国人から申請があったときに、その人が行うことのできる収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を証明する文書を「交付することができる」と定めています。

この「できる」という書きぶりが、任意制度であることの根拠です。入管庁も、就労資格証明書は許可書ではなく、これがなければ就労できないというものでもない、と公式に説明しています。在留カードや旅券の記載だけでは、どの活動が認められているのか分かりにくい。その確認を、雇う側と働く側の双方がしやすくする制度です。

企業が一律に「持ってこい」と求めるのは適切ではありません

ここは、ご担当者様に必ずお伝えしている点です。

入管法19条の2第2項は、外国人を雇用するなどの際に、その人が行うことのできる活動が明らかな場合に、就労資格証明書を提示または提出しないことを理由として不利益な取扱いをしてはならない、と定めています。

条文には「明らかな場合に」という限定が付いています。ですから、あらゆる場面で取得を求めることが一律に禁じられている、と条文だけから言い切れるわけではありません。確実に言えるのは、就労できる活動が在留カードなど他の資料から明らかな場合に、不提出だけを理由として不利益に扱うことはできない、ということです。

そのうえで実務的には、「提出できないなら採用しない」「提出するまで入社を待ってもらう」といった一律の運用は避けるべきです。任意の制度であることを前提に置いた規定であり、一律の条件化はその趣旨に沿いません。求人票に「就労資格証明書をお持ちの方」と記載することも、控えるべきです。

安全な進め方は、制度の意味を説明し、費用の負担を申し出て、取得を勧めるという形です。行政書士報酬を会社が負担する例は実務では珍しくなく、採用時の支援として整理すれば、双方にとって納得のいく形になります。

取っても、在留期間は延びません

もう一点、誤解の多いところです。証明書が交付されても、在留カードの在留期間は1日も延びません。期限が来れば、これまでどおり在留期間更新許可申請が必要です。証明しているのは「いま持っている在留資格で、この仕事ができる」という一点だけで、期間を延ばす制度でも、更新を保証する制度でもありません。

2.就労資格証明書は取るべきか、取らなくていいか|3つのケースに仕分け

ご相談をいただいたとき、私は次の3つのどれに当たるかをまず確認します。

① そもそも対象外|在留資格の変更が必要なケース

転職先の職務内容が、いまの在留資格の範囲を出ている場合。就労資格証明書では対応できません。

たとえば技術・人文知識・国際業務(以下「技人国」)で民間企業の通訳をしていた方が、中学校や高等学校の語学教師として採用されるなら、「教育」への在留資格変更許可申請が必要になります。

この場合、就労資格証明書では対応できません。そして重要なのは、変更の許可が下りるまで新しい会社で働けないという点です。届出だけ済ませて働き始めると、本人は資格外活動、会社は不法就労助長罪という構図になります。

もうひとつ注意していただきたいのが、特定活動46号(本邦大学卒業者)のように、就労先の企業名と活動内容がパスポートに貼付される指定書に明記されている在留資格です。このケースは、転職のたびに在留資格変更許可申請が必要になります。

② 取得を強くお勧めするケース

同じ在留資格の範囲内だが、前職と何かが変わる転職。ここが、この制度を最も活用すべきケースです。

第一に、職務内容が変わる場合。前職ではシステム設計・開発だった方が、転職先では社内ヘルプデスクや一般事務の比重が高くなる。通訳・翻訳担当だった方が、海外営業に移る。技術系の方が管理職として現場管理に入る。いずれも「専門的な知識を使う業務なのか」という点で判断が分かれます。

第二に、学歴・職歴との関連性が薄くなる場合。専門学校卒業(専門士)の方は、原則として、専攻分野と職務内容の関連性が大学卒業者より厳格に見られます。情報処理を学んだ方が通訳・翻訳中心の業務に移る、といった転換は、同じ在留資格の中でも通らないことがあります。

第三に、企業の規模やカテゴリーが大きく変わる場合。前回の許可や更新は、その時点の勤務先と職務内容を前提に審査されています。転職先の会社と新しい職務内容は、まだ入管の審査を受けていません。上場企業から設立2年目のスタートアップへ、といった移動では、次回の更新で会社側の資料が丁寧に求められます。

第四に、無職期間が長かった場合。退職から入社までの空白が長い方は、次の更新で理由の説明を求められます。転職が決まった時点で就労資格証明書を申請しておけば、その説明を期限に追われない状態で済ませられます。

2026年4月15日の明確化で、②に当たる社員が増えています

入管庁は、令和8年(2026年)4月15日付けで「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」を一部改正しました。実務研修に関する別紙1とホテル・旅館等に関する別紙5が更新され、翻訳・通訳等の言語能力を用いた対人業務についての別紙4が新たに公表されています。

これは省令の改正ではなく、審査の考え方を示した文書の改正です。しかし「以前は通っていた説明が、いまは通らない」という変化は、まさにここから生じています。外食業、宿泊業、製造業では、これまで「多少の現場作業が含まれる」という前提で許可されていた業務設計が、次回の更新で改めて問われる場面が増えました。

重要なのは、転職していなくても、この影響は及ぶということです。会社も仕事も変えていない社員が、次回の更新で初めて新しい基準にあてはめられる。②の考え方は、転職者だけの話ではなくなってきています。

(関連記事:技人国の日本語要件(N2)に届かない社員は、更新できなくなるのか飲食店の店長・店長候補は技人国で大丈夫か|現場作業と次の更新

転職していない社員についてはこちら
技人国の更新が不許可になる理由|同じ仕事でも現場作業が多い場合
「このままでは通らない」と分かったときに会社が取れる3つの対応と、それぞれに必要な期間をまとめています。

③ 優先度が下がるケース

就労制限のない在留資格の方、同業種・同職種で企業規模も変わらない転職、そして在留期限まで3か月を切っている場合。

永住者、日本人の配偶者等、定住者など、就労に制限のない在留資格の方は、原則として必要ありません。就労内容の制限がそもそもないからです。

また、同じ業界・同じ職種で、企業規模も大きくは変わらない転職であれば、優先度は下がります。前職でシステム開発をしていた方が、同規模のIT企業で同じくシステム開発に就く、といったケースです。

そして、在留期限まで3か月を切っている場合。転職を伴う申請の標準処理期間は1か月から3か月ですから、証明書を待っていると更新申請が間に合いません。この場合は、証明書を飛ばして更新申請に進むのが通常の判断です。

3.就労資格証明書はいつ申請するか|採用前・採用後と在留期限からの逆算

「内定を出す前に取らせるべきか」というご質問をよくいただきます。制度上は、内定段階でも入社後でも申請できます。ただし書類の揃いやすさは入社後が有利です。前職の退職証明書や源泉徴収票と、転職先の雇用契約書・会社案内・決算書類を一度に用意できるからです。

判断の基準は、日付です

私がお勧めしているのは、在留期限から逆算する方法です。

在留期限までの残り とるべき行動
6か月以上 入社後すみやかに就労資格証明書を申請。「該当しない」でも、職務の組み直し・配属変更・在留資格変更という選択肢が残る。
3〜6か月 職務内容の変わり方しだい。②の不安要素があるなら申請、なければ更新申請の準備に注力する。
3か月未満 更新申請を優先。転職後の初回更新は新しい勤務先と職務内容が改めて確認されるため、企業カテゴリーに応じた資料を早めに揃える。会社側の資料が中心になるので、人事だけでなく経理部門にも声をかけておく。

在留期限まで6か月以上あるなら、入社後すみやかに申請してください。万一「該当しない」という結果になっても、職務内容を組み直して再申請する、配属を見直す、在留資格変更を検討するといった選択肢が残ります。この「残り時間」こそが、制度を使う最大の意味です。

届出は、別に必要です

就労資格証明書を取るかどうかにかかわらず、本人による「所属機関に関する届出」(入管法19条の16)は、退職・入社それぞれから14日以内に必要です。これは義務です。

会社側については、少し正確に整理しておきます。入管法19条の17は所属機関による届出を定めていますが、その対象から「特定技能所属機関」と「労働施策総合推進法28条1項の規定による届出(=ハローワークへの外国人雇用状況届出)をしなければならない事業主」が除かれています。つまり、一般の事業主は外国人雇用状況届出の対象であることによって、はじめから19条の17の届出義務の対象外に置かれている、という構造です。

ですから「ハローワークに出したから免除された」というより、「制度が最初から別々に組まれている」と理解してください。なお、特定技能所属機関には入管法19条の18以下に基づく独自の届出義務があり、技能実習にも技能実習法に基づく別の届出があります。「除かれている=何も出さなくていい」ではありません。

そして、ここが誤解の生まれやすいところですが、会社が外国人雇用状況届出を出しても、本人の14日以内の届出義務がなくなるわけではありません。両者は別の手続きです。会社は届出を出したから安心、本人は会社が出してくれたと思って出していない。この行き違いが実務では非常に多く起きています。入社日に人事の方が横についてオンライン届出を完了させる。それだけで防げます。

(関連記事:就労ビザの退職・転職届を14日以内に出し忘れたら?|期限後の届出と更新への影響

4.就労資格証明書を取らないと、次の更新で何が起きるのか

取らなかったこと自体が問題視されるわけではありません。起きるのは、審査の「重さ」と「タイミング」の問題です。

更新申請で、新しい会社と職務内容が改めて確認されます

取得していれば、転職先での職務内容について一度入管の確認を受けていることを示せます。次回の更新で、職務の適合性を一から説明する負担を軽くできる可能性があります。

取得していない場合、入管にとって新しい会社は初めて見る会社です。転職後の初回更新では、新しい勤務先と職務内容が改めて確認されます。

ただし、必要書類の量は一律ではありません。勤務先の企業カテゴリー(1〜4)によって、求められる資料が変わります。上場企業などのカテゴリー1・2であれば会社側の資料は簡素で済みますが、カテゴリー3・4では、雇用契約書、会社案内、登記事項証明書、決算書類、業務内容の説明資料といった追加資料が求められます。書類が足りなければ資料提出通知書が届き、1か月前後の往復が発生します。

つまり、「転職したから必ず初回申請と同じ量になる」のではなく、「カテゴリーが下がるほど、転職後初回の負担が重くなる」と考えてください。転職先が中小企業や設立間もない会社であるほど、事前の確認が効果を成します。

最も重いのは、時間切れのリスクです

更新申請中に在留期限が過ぎても、期限内に申請していれば最長2か月の特例期間があり、その間は働き続けられます。問題は、この2か月で結論が出なかったときと、不許可になったときです。更新が不許可になると、事情に応じて出国準備を目的とする「特定活動」(30日または31日)が指定されることがあり、その期間は就労できません。法律上必ずこの日数が付与されると決まっているわけではありませんが、実務ではよく見られる扱いです。会社にとっては戦力の突然の喪失、本人にとっては生活の立て直しを1か月ほどで迫られることになります。

就労資格証明書であれば、「該当しない」という結果が出ても、それだけで在留資格が失効するわけではありません。交付されなかった理由や不足していた資料を確認したうえで、資料を整えて改めて申請することも、職務内容の見直しや在留資格変更を検討することもできます。しかも在留期限にはまだ余裕がある。同じ「ダメだった」でも、置かれている状況がまったく違います。

(関連記事:ビザ更新中に在留期限が切れたら|特例期間2か月は働けるのか

「該当しない」が出たときこそ、価値があります

逆説的ですが、就労資格証明書の本当の価値は、交付されなかったときに出ます。

「該当しない」という結果は、いまの職務内容ではこの在留資格に収まらないかもしれない、というシグナルです。それが更新の3か月前ではなく、入社直後に分かる。理由を確認して書類を補う、職務範囲を見直す、配属を変える、在留資格変更を検討する。どの手も打てます。

(関連記事:ビザが不許可になったら|再申請の手順と通すための立て直し方

正直に申し上げます|「該当しない」には、副作用もあります

ここは、勧める側として黙っているべきではないと考えている点です。就労資格証明書を「安心のための手続き」とだけ説明する記事もありますが、申請するということは、会社と本人が、現在の職務内容を自ら入管に開示するということでもあります。

交付されなかったこと自体は行政処分ではありませんし、それだけで在留資格が取り消されるわけでもありません。ただし、開示した職務内容が明らかに在留資格の範囲を出ていた場合、その事実が入管の知るところとなります。入管法22条の4第1項5号は、その在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないことを在留資格取消しの事由の一つとして定めています。実務上、就労資格証明書の不交付から直ちに取消手続が始まるものではありませんが、「まったく無関係」とも言えません。

では、出さないほうがよいのか。私の結論は逆です。その状態を放置すれば、資格外活動と不法就労助長の状態が毎日積み上がっていきます。更新のときに同じ事実が、しかも打つ手のない時点で表に出るだけです。

正しい順序はこうです。まず社内で職務の実態を棚卸しし、専門家と見立てを立てる。そのうえで、出すか、先に業務設計を直してから出すかを決める。「とりあえず出してみる」は、この制度に限っては最善手ではありません。ご相談をいただければ、シフト表・職務分掌・組織図から、申請前に見通しを立てます。

5.元警視庁入管法捜査員の視点|2026年10月の手数料改定が、判断を変えます

ここは、2026年9月の時点でお伝えしておくべき話です。

「やり直し」の値段が、10月から上がります

入管庁は、2026年10月1日付けで在留許可手数料を改定すると公表しています。対象は、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可、永住許可の3つです。

これまで一律6,000円(オンライン5,500円)だった変更・更新の手数料は、許可される在留期間に応じた段階制に変わります。公表されている改定後の額は、1年の許可で窓口3万3,000円、5年以上の許可では窓口7万5,000円という水準です。永住許可は1万円から20万円になります。なお、2026年9月30日までに受け付けられた申請は、許可が10月1日以降になっても改定前の額が適用されるとされています(金額の詳細は入管庁の公表リーフレットでご確認ください)。

そして、就労資格証明書の交付手数料は、この改定でも据え置きです。窓口2,000円、オンライン1,600円のままです。

ただし、2026年10月1日以降のオンライン申請では、交付手数料とは別に220円の決済手数料がかかり、実際の支払額は1,820円になります(変更・更新は330円または550円)。オンライン申請の納付はコンビニ決済・銀行決済に変わり、収入印紙は窓口申請のみとなります。金額は小さいものの、経理の段取りが変わります。

何を意味するか。転職時の職務内容の確認を先送りして、更新でつまずき、在留資格変更をやり直す。その「やり直し」の費用だけが、10月から跳ね上がります。2,000円で先に確認できたものを、数万円かけて後から取り戻す構図です。金額そのものより、順番の問題として捉えてください。

捜査の側から見ていたこと

不法就労助長罪(入管法73条の2)は、知らなかったことに過失がある場合にも成立し得ます。捜査の現場で会社側の説明として多いのが「本人が大丈夫だと言っていた」「よく知らなかった」というものです。在留カードに職務内容は書かれていません。技術・人文知識・国際業務と印字されたカードから、その人が現場作業に従事してよいかは読み取れないのです。

そして、この罪の法定刑は2027年4月1日から引き上げられます。現在の「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科」が、「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科」になります(令和6年法律第60号)。

就労資格証明書は、この場面で会社を守る材料になります。任せる業務がこの在留資格の範囲に収まると入管が確認した書面が、社内に残るからです。これは「不法就労助長罪の免罪符」ではありませんが、会社が確認を尽くしたことを示す客観的な資料にはなります。

(関連記事:不法就労助長罪とは|「知らなかった」では済まない外国人雇用のリスク

就労資格証明書は、次回の更新を保証する書面ではありません

最後に、期待値の話です。就労資格証明書は「次の更新が確実に通るチケット」ではありません。

在留期間の更新は、入管法21条3項により「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に許可されます。判断されるのは職務内容の適合性だけではなく、素行、納税や社会保険料の納付状況、在留状況なども含まれます。証明書を取ったあとに住民税を滞納すれば、そちらが問題になります。

また、証明しているのは「交付の時点で、申請した職務が、現在の在留資格で行える活動に当たる」という一点です。将来にわたって、実際の仕事の中身がどうであっても更新が通る、という保証ではありません。交付を受けた後に業務が変わっていけば、そのときは改めて審査されます。

それでも、転職に伴う更新で最も揉めるのがまさにこの一点である以上、先に片づけておく価値は十分にあります。

6.就労資格証明書の交付申請についてのよくある質問(必要書類・手数料・期間)

Q1.採用の条件として、就労資格証明書の提出を求めてもいいですか。

A.一律に採用条件とするのは避けてください。その方が行うことのできる就労活動が在留カードなど他の資料から明らかな場合に、証明書を提出しないことだけを理由として不利益な取扱いをすることは、入管法19条の2第2項で禁止されています。安全な進め方は、制度を説明し、費用負担を申し出て取得を勧める、という形です。

Q2.審査を待っている間、その社員を働かせて大丈夫ですか。

A.はい。現在の在留資格が有効で、その範囲内の業務であれば就労を続けられます。就労資格証明書は許可制度ではないため、結果を待つ必要はありません。ただし、そもそも在留資格の範囲を出ている業務であれば、審査中かどうかにかかわらず不法就労です。

Q3.「該当しない」という結果になったら、その社員は働けなくなりますか。

A.まず、交付されなかった理由を確認してください。職務内容そのものが現在の在留資格に該当しないと判断されたのであれば、その業務をそのまま続けることには不法就労のリスクがあります。一方、資料の不足や説明不足が理由であれば、書類を整えて再申請する余地があります。

不交付それ自体で在留資格が取り消されるわけではありません。ただし、開示した内容によっては、在留資格取消し(入管法22条の4第1項5号ほか)の検討につながる可能性まで否定はできません。だからこそ、申請前に実態を整理し、見立てを立ててから出すかどうかを決めてください。

Q4.転職のたびに取る必要がありますか。

A.義務ではありませんが、職務内容や企業規模が変わる転職では、その都度の取得をお勧めします。在留資格は特定の会社・特定の業務内容を前提に審査されているため、転職を重ねるほど当初の許可内容から離れていきます。

Q5.社内での配置転換や昇進の場合はどうですか。

A.検討する価値があります。転職していなくても、職務内容が変われば次回更新で審査対象になります。特に、専門業務から現場管理や一般事務へ比重が移った場合は要注意です。転職も配置転換もしていない社員についての考え方は、技人国の更新が不許可になる理由|同じ仕事でも現場作業が多い場合で詳しく解説しています。

7.まとめ|就労資格証明書は「次の更新までの時間」を買うために使う

▶ 就労資格証明書は入管法19条の2に基づく任意の制度です。取らなくても違法ではありません。就労できる活動が明らかな場合に、不提出だけを理由に不利益な取扱いをすることは同条2項で禁止されており、一律の条件化は避けるべきです。

▶ 交付されても在留期間は延びません。効いてくるのは次の更新です。転職先での職務内容の適合性を、期限に追われない時点で確認しておける点に価値があります。

▶ 在留資格そのものが変わる転職と、特定活動46号の転職は、就労資格証明書ではなく在留資格変更許可申請が必要です。許可前の就労は不法就労になります。

▶ 職務内容が変わる、学歴との関連性が薄くなる、企業規模が大きく変わる、無職期間が長かった。このいずれかに当たるなら、在留期限まで6か月以上あるうちに申請してください。なお、専門学校卒でも、文部科学大臣認定の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」修了者は大学等卒業者と同等の取扱いとされています。

▶ 2026年4月15日の明確化以降、この判断は転職者だけの問題ではなくなりました。会社も仕事も変えていない社員が、次回更新で初めて新しい基準にあてはめられます。

▶ 「該当しない」という結果には副作用もあります。出す前に実態を棚卸しし、見立てを立てる。この順序を守ってください。

▶ 2026年10月1日から在留資格変更・更新・永住の手数料が改定されます。就労資格証明書の交付手数料は据え置きです(オンラインは決済手数料220円が加算)。先に確認する費用より、後からやり直す費用のほうが大きくなります。

▶ 不法就労助長罪の法定刑は2027年4月1日から引き上げられます。会社が確認を尽くした記録を残しておくことの意味は、これまでより重くなります。

中途採用した外国人社員の職務内容が前職と変わる、配置転換を予定している、在留期限が近い社員がいる。こうした状況でしたら、在留カード、雇用契約書、前職の職務内容が分かる資料をご用意のうえ、ご相談ください。就労資格証明書を取るべき事案か、更新申請に進むべき事案かを、在留期限から逆算して整理します。

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この記事を書いた人

TAMAフロンティア行政書士事務所 代表

毛呂 敦(もろ あつし)

行政書士 毛呂敦 入管業務を専門とする行政書士。警視庁で約20年間勤務し、うち約10年を国際捜査官として入管法実務に従事。現場で得た知見を活かし、東京・多摩地区(ご相談場所は立川駅)を拠点に、外国人のビザ申請と企業の外国人雇用をサポートしています。
行政書士(登録番号 第26081692号)
外国人雇用管理主任者
元警視庁 国際捜査官
TOPIK(韓国語能力試験)上級
技能実習監理責任者講習 受講済



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