偽造在留カードの見分け方|企業が採用時に行うべき確認方法と読取アプリ
元捜査員の行政書士が見てきた現場のリアル
在留カード確認はコピーだけで足りるのか?
「在留カードのコピーは取っています」だけでは不十分な時代に、企業が整えるべき確認体制を整理します。
その在留カード確認、「コピーだけ」で大丈夫ですか
外国人を雇用している企業の採用担当者の方から、次のようなご相談を受けることがあります。
「在留カードのコピーはちゃんと取っています。でも、本物か偽造かまでは正直わかりません」
「もし偽造だった場合、会社も罪に問われるのでしょうか」
「読取アプリが必要と聞きますが、普通の確認では足りないのでしょうか」
結論から申し上げると、在留カードの原本を見てコピーを取っただけでは、十分な確認を尽くしたとはいえない局面に入っているといえます。
2024年(令和6年)に公布された改正入管法(令和6年法律第60号)により、不法就労助長罪の法定刑は「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」(併科可)へ引き上げられます。この罰則強化の施行日は、同じ改正で創設される育成就労制度と同じ令和9年(2027年)4月1日とされています。
また、不法就労助長罪は「知らなかった」と言うだけでは免れません。雇用主側がどのような確認を行い、その記録を残していたかが、極めて重要になります。
この記事では、私が捜査の現場で見てきた事例も踏まえながら、偽造在留カードを見抜くために企業が整えるべき確認体制を、実務に即して整理します。
なお、本内容は現行の在留カードに関する対応であり、いわゆる第二世代の在留カードや特定在留カードでは、「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」が券面に記載されず、ICチップにのみ記録されるため、ICの読み取りをされる企業様が必然的に増えると思いますが、それでも中には目視で終わらせてしまう方もいらっしゃると私は考えています。
本記事のポイント
| 項目 | 実務での注意点 |
|---|---|
| 法的リスク | 不法就労助長罪は、令和6年改正法の施行により5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金へ引き上げられます。 |
| 「知らなかった」だけでは足りない | 入管法73条の2第2項により、過失がなかったといえる確認体制や記録が重要になります。 |
| 基本の確認 | 原本確認、読取アプリでのICチップ確認、失効情報照会、本人確認、記録保管を組み合わせます。 |
| 最新の実務 | 在留カード等読取アプリから失効情報照会も利用できるようになりました。 |
| 注意点 | 確認結果を保存する場合は、本人同意、利用目的、保管期間、アクセス権限など個人情報保護への配慮が必要です。 |
1. 実際にあった偽造在留カードの採用トラブル
これは、私が捜査側にいた頃に実際に扱った事案です。
ある日、一人の外国人がオーバーステイで摘発されました。事後捜査でアルバイト先が判明し、お店の店長に事情を聴くと、店長は最初こう言いました。
「人違いではないですか。うちの○○くんは真面目な子ですよ」
ところが、入管照会で判明した本当の経歴は違いました。
- 元々は「留学」で来日
- 学校を辞めたまま帰国せず、在留期間経過後も日本に残留
- 偽造された在留カードを使い、氏名や在留資格を偽って面接を受けた
- 店長の信頼を得て長期間勤務していた
事実を告げたとき、店長は完全に言葉を失っていました。
このお店は、何も確認していなかったわけではありません。在留カードとパスポートの原本確認を行い、コピーも取っていました。ただ、在留カード等読取アプリによるICチップの確認まではしていなかったのです。
原本確認やコピー取得は重要です。しかし、偽造カードが精巧化している現在、目視確認だけで真正性を判断するのは危険です。
偽造在留カードで装われやすい在留資格
捜査実務では、偽造在留カードに「永住者」や「定住者」と記載されている事案に遭遇することがありました。
理由は、これらの在留資格には原則として就労内容や就労時間の制限がないためです。コンビニ、飲食店、工場、建設現場など、幅広い職種で働けるように見えるため、不法就労を狙う側に悪用されやすい面があります。
ただし、ここで大切なのは、特定の国籍・年齢・外見・在留資格だけを理由に疑うことではありません。
確認すべきなのは、年齢、来日経緯、家族関係、学歴・職歴、在留資格の説明が自然にかみ合っているかです。
✓どのような経緯でその在留資格になったのか
✓いつ頃、どこの入管で許可を受けたのか
✓家族関係や来日経緯と在留資格の説明に矛盾がないか
これは「疑うための質問」ではなく、本人確認と在留資格確認を適切に行うための質問です。
2. 偽造在留カードの採用が『知らなかった』では済まない理由
不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法第73条の2に定められています。主に次のような行為が処罰対象になります。
- 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせること
- 不法就労させる目的で外国人を自己の支配下に置くこと
- 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為をあっせんすること
そして、企業担当者が特に注意すべきなのが同条第2項です。要旨としては、外国人が不法就労活動をすることを知らなかったとしても、それだけを理由に処罰を免れることはできず、過失がないときに限り免れる、という内容です。
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罰則は引き上げへ
令和6年改正法により、不法就労助長罪の罰則は次のように引き上げられます。
| 項目 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 3年以下 | 5年以下 |
| 罰金 | 300万円以下 | 500万円以下 |
| 併科 | 可 | 可 |
※改正後の罰則は、令和6年法律第60号の施行により適用されます(公布日から2年以内に政令で定める日に施行)。施行時期は最新の公式情報をご確認ください。
また、入管法には両罰規定があります。法人の業務に関して違反行為が行われた場合には、行為者個人だけでなく、法人にも罰金刑が科され得ます。
さらに、処罰や不正行為の認定を受けた場合、特定技能や育成就労の受入れに関する欠格事由・不利益につながる可能性があります。外国人材の受入れを事業計画に組み込んでいる企業にとっては、刑事罰だけでなく、将来の採用・受入れにも影響が及び得ます。
3. 企業ができる確認方法
偽造在留カードを見抜くために、企業が行うべき確認は一つではありません。複数の確認を組み合わせることが重要です。
① 目視確認
出入国在留管理庁は、偽変造防止のための確認ポイントを公表しています。透かし、ホログラム、MOJマークの動きなど、目視で確認できる要素があります。
ただし、近年の偽造カードは精巧化しています。普段から在留カードを見慣れていない採用担当者が、面接の短時間で目視だけにより偽造を見抜くのは容易ではありません。
目視確認は必須。ただし最終判断にしない。
目視で違和感を確認することは大切ですが、ICチップ読取や失効情報照会と組み合わせる運用が必要です。
② 在留カード等番号失効情報照会
在留カード番号を入力し、その番号が失効していないかを確認する仕組みです。失効情報照会のURLは次のとおりです。
https://lapse-immi.moj.go.jp/html/top.html
また、海外IPアドレスからのアクセスが制限されるため、海外IPアドレスが設定されている場合や、一部のVPN・匿名化サービスを利用している場合は、アクセスできないことがあります。社内ネットワークがVPN経由になっている企業は、確認方法を見直しておくと安心です。
ただし、この照会だけで偽造を完全に見破れるわけではありません。有効な在留カード番号を悪用した偽変造カード作成事案も発生しているため、番号照会だけで安心するのは危険です。
③ 在留カード等読取アプリ
出入国在留管理庁が無料で公開している公式アプリです。スマートフォンやパソコンで在留カードのICチップを読み取り、ICチップ内に保存された身分事項や顔写真等の情報を画面に表示できます。確認のポイントは次の2つです。
✓正常に読み取れるか
✓アプリに表示された情報と、目の前の在留カード券面の記載・写真が一致しているか
在留カード等読取アプリは、現時点で最も有効な確認手段と言えます。同アプリから失効情報照会も利用できるようになっていますし、今後は、ICチップ読取と失効情報照会をセットで行う運用が望ましいといえます。
読み取れない場合の注意点
「読み取れない=直ちに偽造」と決めつけるのは危険です。正規のカードでも、端末、カードリーダー、金属製の机、アプリのバージョン、通信環境などが原因で読み取れない場合があります。
1端末や場所を変えて再度試す
机や端末、カードリーダーの影響で読み取れないことがあります。
2アプリやOS、カードリーダーの状態を確認する
アプリの更新や機器の状態も確認してください。
3地方出入国在留管理官署に相談する
それでも読み取れない場合は、専門機関へ確認します。
4総合的に判断する
目視確認、本人確認、経歴の聞き取りとあわせて判断してください。
4. 企業が明日から整えるべき5つの手順
1在留カード原本を本人から確認する
コピーやスマートフォン内の画像だけでは不十分です。まず原本を本人から提示してもらい、券面の記載、顔写真、在留資格、在留期間、就労制限の有無を確認してください。
2読取アプリでICチップを確認する
面接担当者や人事担当者の端末に公式の在留カード等読取アプリを導入し、読み取った画面の情報と券面の情報が一致しているかを確認してください。
3失効情報照会を行う
在留カード番号が失効していないかを確認します。ICチップ読取と失効情報照会は、どちらか一方ではなく、セットで行うのが望ましい運用です。
4確認記録を保存する
読取アプリの確認結果、失効情報照会の結果、確認日、確認者、確認方法を記録し、採用書類や雇用契約書とあわせて保管してください。
5在留資格取得の経緯を聞き取る
書類だけでなく、口頭での確認も重要です。経歴と在留資格の説明がかみ合わない場合には、追加確認を行ってください。
口頭確認で見るべきポイント
✓いつ、どのような経緯で日本に来たのか
✓現在の在留資格になった理由は何か
✓家族関係や学歴・職歴と在留資格の説明に矛盾がないか
✓これまでの在留資格の変更履歴を本人が説明できるか
たとえば、日本人と結婚していると説明する場合でも、なぜ現在の在留資格が「永住者」や「定住者」なのかは、個別に確認する必要があります。配偶関係があるからといって、必ず「日本人の配偶者等」の在留資格になるわけではありません。
会話の中で説明が二転三転する、家族構成と在留資格の説明が合わない、来日経緯をほとんど説明できないといった場合には、追加確認を行うべきです。
在留カードの確認・偽造対策に関するよくある質問
Q1. 派遣会社経由で外国人を受け入れています。確認は派遣元任せでよいですか?
いいえ。派遣先で実際に働かせる以上、派遣先企業も不法就労助長罪の対象になり得ます。
「派遣元が確認しているはず」と任せきりにするのではなく、派遣元から確認記録の提供を受ける、派遣先での業務内容が在留資格に合っているか確認する、必要に応じて派遣先でも原本確認・読取アプリ確認を行う、といった体制を整えるべきです。
Q2. すでに雇っている外国人社員のカードも、改めて確認すべきですか?
はい。定期的に在留カードの現物確認、アプリ、失効情報確認を行うべきです。
採用時点では問題がなくても、その後、企業側が知らないうちに在留資格が取り消されていることも考えられます。
年1回など、社内で定期確認のタイミングを決めておくとよいでしょう。
Q3. 読取アプリで問題がなければ、他の確認は必要ないですか?
いいえ。読取アプリは、主にカードが本物かを確認するための手段です。
ICチップが本物でも、別人がそのカードを使っている可能性や、在留資格が取り消されている可能性は残ります。
そのため、カードの顔写真と目の前の人物の顔が一致するか、失効情報に該当しないかを確認する必要があります。
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Q4. 採用後に偽造在留カードだったと分かった場合、どうすればよいですか?
まず就労を止め、採用時の確認資料、在留カード写し、読取結果、失効情報照会結果、面接記録、勤務記録などを保全してください。
そのうえで、弁護士を含む専門家に速やかに相談し、必要に応じて地方出入国在留管理官署や警察への対応を整理してください。
感情的に本人を問い詰める、自社だけで処理する、資料を廃棄する、事実を隠すといった対応は、会社側の説明を難しくする可能性があります。早い段階で、冷静に証拠を整理することが重要です。
まとめ
外国人雇用が広がる中で、偽造在留カードは決して他人事ではありません。ただし、企業が行うべき確認手順は、決して複雑ではありません。
1. 在留カード原本を本人から確認する
2. 在留カード等読取アプリでICチップを確認する
3. 失効情報照会を行う
4. 確認結果を適切に記録・保管する
5. 在留資格と経歴・業務内容の整合性を確認する
この5つを採用時と更新時に継続して実施することで、企業としての確認体制は大きく強化されます。
「在留カードのコピーを取ったから大丈夫」ではなく、何を、いつ、誰が、どの方法で確認したのかを記録に残すこと。これが、これからの外国人雇用における基本です。
このようなお悩みは早めにご相談ください
✓自社の確認方法が十分か不安
✓採用予定者の在留資格に違和感がある
✓すでに雇用している外国人社員の在留管理を見直したい
✓派遣・紹介経由の外国人材の確認体制を整えたい
当事務所では、警察で入管法違反事件の捜査に携わった経験と、入管実務の視点を踏まえ、在留カード確認体制の整備、外国人雇用のリスク点検、採用時チェック体制の構築をサポートしています。
外国人材は、これからの日本経済に欠かせない存在です。だからこそ、正しい人を、正しい手続きで迎え入れることが、企業にとっても本人にとっても、いちばん安心できる道だと考えています。
※本記事は執筆時点の法令・運用に基づいて記載しています。入管法令や運用は改正されることがありますので、実際の対応にあたっては最新情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。
