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育成就労の外部監査人とは|4つの要件と「なれる人・なれない人」一覧

元警視庁入管法捜査員の行政書士が解説

外部監査人が決まらなければ、監理支援機関の許可申請は出せません。誰が就任できるのかを整理します

2027年4月1日、育成就労制度が施行され、技能実習制度から段階的に移行します。監理団体は「監理支援機関」となり、事業を続けるには改めて許可を受けなければなりません。その許可要件のひとつが、すべての監理支援機関に義務づけられた外部監査人の設置です。要件、なれない人、就任後の業務を、条文と公式情報に沿って整理します。

「うちは今まで外部役員を置いていた。そのまま続けられないのか」
「顧問の行政書士に頼めばいいと思っていたが、断られてしまった」
「組合の監事が行政書士の資格を持っている。この人ではだめなのか」
「引き受けてもらえたとして、実際に何をしてもらうことになるのか」

育成就労制度では、技能実習制度にあった「指定外部役員」の仕組みが廃止され、外部監査人に一本化されました。社内の役員による点検では、もう要件を満たせません。さらに、外部監査人の氏名は外国人技能実習機構のホームページで公表されます。名前を貸すだけ、という関わり方が想定されていない制度になったということです。

私は行政書士になる前、警視庁で約20年間勤務し、そのうち約10年間は入管法違反事件の捜査に従事してきました。技能実習の監理団体や受入企業が、どこでつまずき、何を指摘され、どう立件されていくのかを現場で見てきた立場から、外部監査人の制度を実務目線で整理します。

当事務所では、外部監査人への就任と監理支援機関の許可申請サポートをお受けしています。就任の可否や申請スケジュールについては監理支援機関・登録支援機関サポートでご案内しています。

※本記事は2026年8月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。育成就労制度は施行前であり、運用の詳細は今後具体化されます。個別の判断は最新の公式情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

目次

この記事のポイント【先に結論】

外部監査人とは、監理支援機関の役員の職務執行を法人の外部から監査する者です(育成就労法第25条第1項第5号)。個人でも法人でも就任できます。
技能実習制度では「指定外部役員」か「外部監査人」かを選べましたが、育成就労制度では外部監査人に一本化されました。社内の役員による点検では要件を満たせません。
要件は大きく4つ。過去3年以内の養成講習修了/一定の資格/外部性/氏名公表への同意です。このうち講習は技能実習制度から変わっていません。新しいのは、資格が求められるようになった点です。
中心となるのは弁護士・社会保険労務士・行政書士(各法人を含む)です。公認会計士・税理士・司法書士は、「士業だから」という理由だけでは就任できません。
監理支援機関と顧問契約を結んでいる専門家は就任できます。一方、傘下の育成就労実施者(受入企業)と顧問契約がある場合は就任できません。
業務は、各事業所について3か月に1回以上の遂行状況の確認と、各事業所につき年1回以上の同行監査。この回数も技能実習制度と同じです。変わるのは、1回あたりに求められる中身のほうです。
外部監査人が決まらなければ就任承諾書が揃わず、許可申請そのものを出せません。

1.育成就労の外部監査人とは|監理支援機関を法人の外から監査する人

外部監査人とは、監理支援機関の役員が監理支援事業に関する職務をきちんと果たしているかを、法人の外部の立場から監査する者をいいます。根拠は、育成就労法(外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律)第25条第1項第5号。監理支援機関の許可基準を定めた条文の中に置かれています。

なぜ「外部の目」が法律で義務づけられたのか

監理支援機関は、傘下の育成就労実施者(受入企業)を指導・監督する立場です。ところが、その受入企業は多くの場合、組合の組合員であり、監理支援費を払ってくれる相手でもあります。身内を厳しく監督することは、構造的に難しい。だからこそ、法律で外部の視点を義務づけたわけです。

なお、外部監査人には個人でも法人でも就任できます。法人として就任する場合の注意点は、第4章の可否一覧で触れます。

2.技能実習との違い|変わった点と、変わっていない点(比較表)

技能実習制度にも外部監査の仕組みはありました。育成就労制度で強化された部分もあれば、まったく変わっていない部分もあります。ここを混ぜて理解すると、対応の優先順位を間違えます。変わっていない項目も、あえて表に残しました。

項目 技能実習制度(現行) 育成就労制度(2027年4月〜) 変化
外部性の担保 指定外部役員か外部監査人のいずれかを選択 外部監査人に一本化(全機関に義務) 変更
就任できる人 資格要件なし。外部性と講習修了を満たせば就任できた 弁護士・社会保険労務士・行政書士など、育成就労法・入管法・労働関係法令の知見を有する者に限定 変更
外部性の範囲 監理団体・実習実施者の現役/過去5年以内の役職員など 上記に加え、送出機関の役職員、他の監理支援機関の役職員、会費の支払いを受けている法人なども対象(第4章の一覧 変更
氏名の公表 機構がインターネットで公表することへの同意が必要 変更
養成講習 過去3年以内に監理責任者等講習を修了。3年ごとに再受講 過去3年以内に外部監査人向けの養成講習を修了。3年ごとに再受講(経過措置あり) 同じ
監査の回数 3か月に1回以上の確認+各事業所につき年1回以上の同行監査 同左(回数は増えません) 同じ
許可との関係 許可要件の一部 選任していなければ申請自体が困難 変更
既存団体の移行 自動移行はなし。すべての団体が新規に許可申請 変更

いちばん実務に響くのは、一本化・資格の限定・氏名公表の3点です。「組合の外部役員に名前を貸してもらう」「顧問の税理士に頼む」という形で乗り切ってきた団体は、方針を変えざるを得ません。

一方で、講習も監査の回数も、技能実習制度から変わっていません。手続の負担が新しく増えるわけではないのです。では何が変わるのか。その1回に求められる中身です。この点は第9章で詳しく述べます。

3.外部監査人になるための4つの要件|養成講習・資格・外部性・氏名公表

主務省令および育成就労制度運用要領は、外部監査人の要件を次のように定めています。ひとつずつ確認します。

要件1|過去3年以内に外部監査人の養成講習を修了していること

はじめにお伝えしておくと、講習の義務は技能実習制度からありました。監理責任者・指定外部役員・外部監査人は、いずれも過去3年以内に所定の講習を修了していることが要件で、3年ごとの再受講も必要でした。育成就労制度でも、この枠組みは変わりません。法務大臣・厚生労働大臣が告示で定める外部監査人向けの養成講習を、申請時点で過去3年以内に修了している必要があります。

ここに経過措置があります。育成就労法の施行前に技能実習制度の「監理責任者等講習」を受講した人も、外部監査人に選任できるとされています(外国人技能実習機構「よくあるご質問(監理支援機関の許可申請関係)」7-17。以下、番号のみで引用します)。実務上は、行政書士などの中でも、この監理責任者等講習を受けている専門家かどうかが、当面の目安になります。

なお、就任後も講習は受け続ける必要があります。「更新手続」があるわけではなく、修了から3年を経過する前に、あらためて受講しなければなりません。

要件2|弁護士・社労士・行政書士などの資格または知見を有すること

ここが、技能実習制度からの最大の変更点です。技能実習制度の外部監査人には、資格そのものの要件はありませんでした。外部性を満たし、講習を修了していれば就任できたのです。育成就労制度では、次のいずれかであることが求められます。

弁護士または弁護士法人
社会保険労務士または社会保険労務士法人
行政書士または行政書士法人
その他、育成就労に関し知見を有する者

4つ目の「その他」は、間口が広そうに見えて、実際にはかなり狭い枠です。機構は、出入国または労働に関する法令を研究している大学教授など高度な知識・経験を客観的に評価できる者、または外部監査人向け講習の実施機関として告示され相当の実績がある機関(直近2事業年度のいずれかで講習を20回以上実施)に限られると説明しています。「技能実習制度で長年外部監査人を務めてきた」という実績だけでは、この枠には入りません(7-10、7-11)。

「顧問の税理士さんに頼もう」が通らなくなったのは、この変更のためです。

要件3|外部性が確保されていること(密接な関係がないこと)

監理支援機関そのもの、傘下の育成就労実施者、送出機関などと「密接な関係」がないことが求められます。技能実習制度にも外部性の要件はありましたが、育成就労制度では判断の対象となる関係の範囲が広がりました。ここが最も判断に迷うところなので、次の章で一覧にして整理します。

要件4|氏名を公表されることに同意していること

外部監査人の氏名(法人の場合は法人名)は、機構のホームページで公表されます。この公表に同意していることが要件です。個人が就任する場合、勤務先の法人名までは公表されません(7-19)。

名前が公表される以上、引き受ける側にとっても軽い仕事ではありません。この点は、外部監査人を探す側にとっても意味を持ちます。名前が残ると分かっていて、なお形式的な確認で済ませようとする専門家がいるとすれば、その姿勢自体が判断材料になるからです。

4.外部監査人になれない人・なれる人【可否一覧表】

ここが実務でいちばん問い合わせの多いところです。「資格さえあればなれる」わけではありません。機構が公表しているよくあるご質問(令和8年7月10日更新)をもとに、代表的なケースを一覧にしました。

外部監査人になれない人|監事・親族・受入企業の顧問など

立場・関係 可否 理由・根拠
監理支援機関の監事(行政書士資格あり) × 組合員かどうかにかかわらず、監事は「役員」に当たる(7-13)
監理支援機関の現役役職員、退任から5年以内の元役職員 × 「元役職員」に当たり外部性が担保されない。ただし監理事業の業務に携わっていない非常勤の指定外部役員だった場合は例外(規則附則第5条)
監理支援機関の代表者の配偶者・二親等以内の親族 × 役員と社会生活において密接な関係を有する者に該当(7-12)
育成就労実施者やその役職員の配偶者・二親等以内の親族 × 規則第47条第1項第2号に明記。過去5年以内に監理支援を行った実施者の関係者も含む
傘下の育成就労実施者と顧問契約がある弁護士・社労士・行政書士 × 監理支援を受ける受入企業の顧問である以上、外部性が担保されない(7-3)
他の監理支援機関の役職員 × すでに他機関の役員・職員である者は就任できない(7-8)
監理支援機関の構成員である行政書士法人・その所属行政書士 × 構成員そのもの、または構成員の役員・職員である場合(7-9)
送出機関の役職員、過去5年以内にこれらであった者 × 取次ぎを受ける外国の送出機関との関係も外部性の判断対象
監理支援機関・実施者から会費の支払いを受けている法人 × 運用要領が「密接な関係を有する者」の例として明示。顧問料ではなく会費でも問題になる
公認会計士・税理士・司法書士(資格のみを理由とする場合) × 「士」であることだけでは就任できない。出入国・労働関係法令の高度な知識・経験を客観的に評価できる場合などに限られる(7-5)

外部監査人になれる人|機関の顧問・元役員・事業所の賃貸人など

立場・関係 可否 理由・根拠
監理支援機関と顧問契約を結んでいる弁護士・社労士・行政書士 顧問契約があること自体は「密接な関係」に当たらない(7-2)
監理支援機関の元役員(退任から5年を超えている場合) 「元役職員」の期間制限を超えている(7-7)
入国後講習の法的保護科目の講師を有償で務める社会保険労務士 7-14
監理支援事業所の賃貸人である行政書士 7-15
複数の監理支援機関の外部監査人を兼任すること 兼任は可能(7-6)。ただし年5回×機関数の実働が発生する
法人として就任する場合 実地で監査を指揮する「監査実施責任者」が講習を受講。複数名の選任も可(7-20)
非常勤の指定外部役員だった人(監理事業の業務に携わっていない場合) 辞任から5年以内でも「元役職員」に当たらない(規則附則第5条)

確認は2段階|入口の要件と、関係の洗い出し

整理すると、確認すべきことは2段階です。まず、資格と養成講習という入口の要件を満たしているか。そのうえで、傘下の企業や機関そのものとどうつながっているか

前者は履歴書と修了証で確認できますが、後者は関係を洗い出さなければ見えません。顧問先が組合員に混じっていないか。ここを見落としたまま申請すると、審査の途中で外部性を問われることになります。

▶ 外部監査人を含む許可要件の全体像は、こちらの記事で整理しています

関連記事:許可申請の要件と費用 ▶

5.「顧問弁護士・顧問行政書士は外部監査人になれない」は誤解です

制度の解説として、「顧問契約を結んでいる弁護士や行政書士は、日常的な取引関係があるため独立性が担保できず、外部監査人から排除される」という説明を見かけることがあります。しかし、これは正確ではありません。機構は、はっきりとこう回答しています。

監理支援機関と顧問契約を結んでいる弁護士・社会保険労務士・行政書士(各法人を含む)でも、要件に適合し欠格事由に該当しなければ、当該監理支援機関の外部監査人になることができる(7-2)
監理支援機関の構成員と顧問契約を結んでいる場合でも、その構成員が監理支援を行う育成就労実施者でなければ、外部監査人になることができる(7-4)
一方、その構成員が監理支援を行う育成就労実施者である場合は、外部監査人になれない(7-3)

つまり、線が引かれているのは「監理支援機関との顧問契約」ではなく、「監理支援の対象となる受入企業との関係」です。組合そのものの顧問であることは問題にならず、その組合が監理支援する組合員企業の顧問であることが問題になる。ここを取り違えると、選択肢を自分から狭めることになります。

実務的には、候補となる専門家の顧問先一覧を、会員・組合員等一覧表に載る企業と突き合わせてください。重なりがなければ、監理支援機関自身の顧問であっても差し支えありません。

制度が施行前である以上、解説記事は「いつ時点の情報か」を確かめて読むことが大切です。

6.外部監査人の業務内容|3か月に1回の定期確認と年1回以上の同行監査

就任すれば終わり、ではありません。外部監査人には、法令上はっきりと業務が定められています。この回数の枠組み自体は、技能実習制度と同じです。増えるのは回数ではなく、1回あたりに求められる中身のほうです。

(1) 3か月に1回以上の定期確認(年4回)|帳簿を実際に開く

監理支援機関の各事業所について、監査等の業務の遂行状況を3か月に1回以上確認し、結果を記載した外部監査報告書を作成して監理支援機関に提出します。確認の方法も決まっています。

責任役員および監理支援責任者から報告を受けること
事業所において設備を確認し、帳簿書類その他の物件を閲覧すること

書面を受け取って眺めるだけ、という進め方は想定されていません。事業所に足を運び、帳簿を実際に開くことが前提です。

(2) 年1回以上の同行監査|「1年に1回」の数え方に注意

外部監査人は監理支援機関の役職員ではないため、監理支援機関自身が行う監査の業務には従事しません。その代わり、監理支援機関が育成就労実施者に対して行う監査に、監理支援事業を行う各事業所につき1年に1回以上同行し、結果を記載した書類(外部監査報告書(同行監査))を提出します。

なお、傘下のすべての育成就労実施者に同行しなければならないわけではありません(7-16)。

「1年に1回以上」の数え方にも注意してください。運用要領は、①事業年度中に1回以上実施したうえで、②前回の同行監査の実施日を起算日とする1年以内に少なくとも1回以上実施する、という両方を求めています。初回を5月10日に行ったなら、次回は翌年の5月10日までです。事業年度で区切って「今年度分は済んだ」と考えると、②のほうで期限を超えることがあります。

作成した外部監査報告書は、監理支援機関に提出するだけでなく、帳簿書類として事業所に備え付けておく必要があります。電磁的記録でも差し支えありません。

この備付けには意味があります。外部監査報告書は、機構の実地検査で確認される書類です。機関の内部で完結する資料ではありません。確認した事実は報告書に記載され、そこに残る。外部監査人が「見たけれど書かなかった」を選べる制度にはなっていない、ということです。

回数は「事業所ごと」|1か所でも年5回が最低ライン

監理支援機関が育成就労実施者に行う監査自体、3か月に1回以上、実地確認、育成就労責任者・育成就労指導員からの報告聴取、育成就労外国人の4分の1以上との面談、設備と帳簿の確認、宿泊施設など生活環境の確認まで求められる重いものです。同行監査は、その現場に外部の目がもうひとつ入る場面ということになります。

定期確認も同行監査も、回数は「監理支援事業を行う各事業所につき」で数えます。事業所が1か所なら、定期確認4回と同行監査1回で、年に最低5回。事業所が増えれば、その分だけ増えます。名義を貸すだけでは、そもそも業務が成立しません。

なお、運用要領は「外部監査人は、監理支援機関が監理支援を行う育成就労外国人の外部通報窓口としての役割を果たすことも望まれる」としています。義務ではありませんが、制度が外部監査人に期待している立ち位置がよく表れた一文だと個人的に感じます。

外部監査人の就任が可能かどうか、確認だけでもお受けします

要件を満たす有資格者の数には限りがあり、申請期限が近づくほど確保は難しくなります。まずは、貴機関の傘下企業との関係を確認するところから始めましょう。

外部監査人・監理支援機関サポートを見る ▶

7.外部監査人の要件は、就任後も維持し続ける必要があります

見落とされやすい点をひとつ。外部監査人の設置は「許可を取るための条件」であると同時に、「許可を維持するための条件」でもあります。監理支援機関の許可基準は、事業を行う全期間にわたって維持しなければならず、満たさなくなれば指導、改善命令、さらには許可の取消しの対象となり得ます。

運用要領も、外部監査人の要件は「申請時点から監理支援機関の許可を受けている間を通じて」満たす必要があるとしています。崩れる場面は主に3つです。

外部監査人が辞任し、後任が決まらないまま空白期間が生じた
養成講習の修了から3年が経過し、再受講を失念していた
外部監査人の顧問先だった企業が、あとから組合に加入して育成就労実施者になった

3つ目は実際に起きやすいと考えています。組合員は増えるものだからです。新しく育成就労実施者が加わるときは、外部監査人の顧問先と重ならないかを確認する。この一手間を運用に組み込んでおくことをおすすめします。

8.外部監査人を選ぶときに確認したい6つのチェックポイント

候補者が見つかったら、契約の前に次の6点を確認してください。

1.養成講習(または経過措置による監理責任者等講習)を修了しているか、修了から3年以内か
2.弁護士・社会保険労務士・行政書士として現に登録している
3.傘下の育成就労実施者と顧問契約その他の関係がない
4.1事業所あたり年5回以上訪問できる距離にあるか。遠方の場合、交通費はどうなるか
5.入管法・労働関係法令の知見がどれくらいあるか
6.耳の痛いことを指摘してくれる人か。この指摘が結果的にあなたを守ることになります。

とくに5つ目です。外部監査で問題になるのは書類の形式ではなく、外国人が認定計画どおりの業務に従事しているか、労働時間や賃金の記録が実態と合っているか。在留資格と労務の境目にある領域です。ここを見られるかで、報告書の中身は変わります。

そして6つ目は、次の章の話につながります。

9.元入管法捜査員の視点|外部監査は、機構の実地検査の「予行演習」です

私は入管法違反事件の捜査に約10年間従事してきました。そこで繰り返し見てきたのは、悪意のある組織が摘発される場面よりも、「誰も指摘してくれなかったために、気づいたら引き返せなくなっていた」組織でした。

指摘すべきことを指摘しない外部監査人は、監理支援機関を守っているようで、実際には最大のリスク要因になります。理由は3つです。

理由1|問題は、放置されるほど大きくなる

小さな記録の不備は、放置されると運用の常態になり、やがて構造的な違反になります。3か月に1回の確認で拾えたはずのものが、機構の実地検査や捜査で表に出てきたときには、規模が違います。

理由2|何も指摘していない報告書は、「機能していなかった証拠」になる

外部監査報告書は残ります。何も指摘していない報告書が積み上がった状態で問題が発覚すれば、その報告書自体が「機能していなかった証拠」として扱われます。そのとき問われるのは受入企業だけではありません。外部監査が形骸化していたこと自体が、監理支援機関の体制不備として跳ね返ります。

理由3|外部監査人の氏名は公表される

技能実習制度では、外部監査人の氏名が公表される仕組みはありませんでした。育成就労制度では公表されます。つまり、形式的な報告書しか作らなかった監査人が誰であったかも、あとから分かるということです。

機関にとっても、引き受ける専門家にとっても、逃げ場のない仕組みになりました。名前を貸すだけの関わり方は、双方にとって割に合いません。

外部監査は、機構の実地検査の「予行演習」です

ここまで危険の話ばかりしてきましたが、見方を変えてみてください。外部監査は、年に数回、外の目に厳しく見てもらえる機会です。ここで出た指摘は、処分にはなりません。改善のチャンスとして残るだけです。

同じ不備を、先に外部監査人に見つけてもらうのか。機構の実地検査で初めて突きつけられるのか。この違いが、そのまま事業の存続を分けます。

場面 形式だけの外部監査 予行演習としての外部監査
監査当日 チェック欄に丸を付けて終わる 帳簿・設備・運用を実際に確認し、担当者から話を聴く
報告書 「問題なし」の一行、自由記述欄は空欄 指摘事項・根拠となる条文・具体的な改善案を記載
監査と監査の間 何も変わらない 指摘を直し、直した記録が残る
機構の実地検査 その場で初めて不備を指摘され、外部監査の形骸化まで問われる 指摘済み・改善済みの状態で受けられる
結果 改善命令・許可の取消しのリスク 事業を続けられる

では、厳しければよいのか。それも違います。指摘は、必ず根拠と直し方をセットで示すべきものです。どの条文・基準に照らして問題なのかと、現実的にどう直せばよいのか。そこまで示さない指摘は、機関を困らせるだけで、運営の改善にはつながりません。

技能実習制度にも外部監査の仕組み自体はありました。しかし、現場を見てきた実感として、実態は形式的な確認にとどまっていたケースが多かったと感じています。監査を受ける側が監査人を選び、報酬を払う。この構造のもとでは、詳しく見る監査人より、緩く見る監査人が選ばれやすくなります。

育成就労制度の外部監査は、それとは違います。多くの方が「監査」と聞いて思い浮かべるものを想定してください。ただしこれは、実施者(受入企業)や監理支援機関だけに厳しい制度ではありません。監査する側である我々の責任も、同時に問われます。氏名が公表されるとは、そういうことです。

摘発される前に、内部で指摘される体制をつくる。外部監査人は、そのために置かれた仕組みです。三者がそれぞれ制度を理解し、同じ方向を向いて協力できる関係であることが、いちばん重要だと考えています。

▶ 受入企業側の在留管理体制についても、同じ論点があります

在留カードの確認記録、在留資格と実際の業務内容の整合、資格外活動。同行監査で見られる論点は、そのまま企業のコンプライアンスの論点でもあります。2027年4月からは、不法就労助長罪の罰則も引き上げられます。

外国人雇用の企業サポート(在留管理体制づくり)を見る ▶

10.外部監査人についてのよくある質問

Q1.これまで指定外部役員を置いていました。その方に外部監査人になってもらえますか?

育成就労制度では、外部監査人の設置に一本化されます。ただし、その方個人については道が残っています。監理事業の業務に携わっていなかった非常勤の指定外部役員は、辞任から5年以内であっても「元役職員」に当たらないとされているからです(規則附則第5条)。資格と講習の要件を満たせば、外部監査人に就任できます。

Q2.許可申請を依頼した行政書士が、そのまま外部監査人になっても問題ありませんか?

制度上は可能です。監理支援機関と顧問契約を結んでいる場合でも、要件に適合し欠格事由に該当しなければ就任できるとされています。申請段階から体制を把握している分、監査の立ち上がりが円滑になる場合もあります。

ただし注意点があります。就任後も監理支援業務そのものを代行してしまうと、自分がつくった運用を自分で監査する状態になります。申請の契約と外部監査の契約は分けるのが健全です。

Q3.外部監査人の報酬の相場はどのくらいですか?

制度が施行前のため、確立した相場はまだありません。判断材料は、1事業所あたり年5回の訪問と報告書作成が発生すること、遠方なら交通費が加わることです。年額契約か1回ごとのスポットか、期中の相談が含まれるかで総額は変わりますので、料金に何を含んでいるかをよく確認してください。

ひとつだけ、判断の目安を申し上げます。年5回の実地訪問と報告書作成を実際に行えば、極端に安い金額にはなりません。相場から大きく外れた見積りは、どこかを省いている表れと考えたほうが安全です。そして省かれるのは、たいてい報告書の中身です。

なお、複数の監理支援機関の外部監査人を兼任することは可能ですが(7-6)、年5回×機関数の実働が発生するため、受任できる数には現実的な上限があります。当事務所の料金は監理支援機関サポートのページで公開しています。

Q4.技能実習で外部監査人をお願いしていた方に、そのまま続けてもらえますか?

資格と講習の要件を満たしていれば可能です。ただし、育成就労制度では就任できる人が士業などに限定され、外部性の判断もより細かく定められています。傘下の育成就労実施者との関係、会費のやり取りの有無、他の監理支援機関の役職員になっていないかを、改めて確認してください。技能実習で問題がなかったからといって、そのまま根拠にはなりません。

Q5.外部監査人が決まっていなくても、許可申請だけ先に出せませんか?

出せません。外部監査人の就任承諾書及び誓約書並びに概要書(参考様式第2-5号)は、許可申請の添付書類です。外部監査人が決まらなければ、書類が揃わず申請自体ができません。

11.まとめ|早く動いた機関から、選択肢が埋まっていく

要件を並べればシンプルです。講習、資格、外部性、公表への同意。このうち講習と監査の回数は技能実習制度から変わっておらず、新しく大きく変わったのは「誰がなれるか」と「どこまで見るか」の2点です。

しかし実際に候補者を探し始めると、「資格はあるが顧問先が組合員にいる」「引き受けてくれるが遠方で年5回は難しい」といった理由で、次々と候補が消えていきます。そのうえ全国の監理団体が同じ時期に探しており、要件を満たす有資格者の数には限りがあります。

外部監査人が決まらなければ、許可申請は出せません。逆にいえば、ここさえ固まれば申請準備は一気に進みます。まずは、就任が可能かどうかの確認から始めてください。

育成就労の外部監査人をお探しの監理団体・監理支援機関の方へ

次のような機関の方は、早めにご相談ください。就任の可否と、申請までのスケジュールを一緒に整理します。

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当事務所は入管業務を専門とする行政書士事務所です。元警視庁入管法捜査員として入管法違反事件の捜査に約10年間従事した経験と、外国人雇用管理主任者としての労務側の視点を併せ持つ立場から、外部監査人への就任と監理支援機関の許可申請をお受けしています。

外部監査人は「外部性」が生命線です。当事務所の顧問先が傘下の育成就労実施者に含まれる場合など、お引き受けできないケースもあらかじめ明示しています。判断に迷う関係性があるときほど、早めにご相談ください。

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【法令・情報の根拠】

  • 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(第25条第1項第5号、第26条、第39条、第41条)
  • 同法施行規則(第47条/附則第4条・第5条)
  • 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領」第5章第2節第5(令和8年4月6日版)
  • 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則第30条(技能実習制度における外部監査人の要件・監査の頻度)
  • 外国人技能実習機構「よくあるご質問(監理支援機関の許可申請関係)」(令和8年7月10日更新)⑦外部監査に関するもの
  • 外国人技能実習機構「監理支援機関許可施行日前申請」(参考様式第2-5号 外部監査人の就任承諾書及び誓約書並びに概要書)
  • 出入国在留管理庁「育成就労制度」(2027年4月1日施行)
  • 公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)「2026年度 養成講習の概要」

※本記事は2026年8月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。育成就労制度は2027年4月1日の施行前であり、運用の詳細は今後具体化されます。外部監査人への就任可否は、監理支援機関との関係、傘下の育成就労実施者との関係など個別の事情により判断されます。実際の対応にあたっては最新の公式情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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この記事を書いた人

TAMAフロンティア行政書士事務所 代表

毛呂 敦(もろ あつし)

行政書士 毛呂敦 入管業務を専門とする行政書士。警視庁で約20年間勤務し、うち約10年を国際捜査官として入管法実務に従事。現場で得た知見を活かし、東京・多摩地区(ご相談場所は立川駅)を拠点に、外国人のビザ申請と企業の外国人雇用をサポートしています。
行政書士(登録番号 第26081692号)
外国人雇用管理主任者
元警視庁 国際捜査官
TOPIK(韓国語能力試験)上級
監理責任者等講習 終了済



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