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外国人社員が離婚したら|会社はいつまで雇える?配偶者ビザの6か月ルール

元警視庁入管法捜査員の行政書士が解説

「日本人の配偶者等」の社員が離婚しても、すぐ働けなくなるわけではありません。境目は6か月です

離婚の報告を受けて、翌日から自宅待機を命じてしまう会社があります。しかし在留資格は、取り消されるまでは有効です。会社が見るべきは、在留カードの期限と、離婚からの経過月数の二つ。いつまで雇えるのか、届出は誰の義務か、変更申請中はどう扱うのかを、条文と公式情報に沿って整理します。

「社員から離婚したと報告がありました。明日から働かせても大丈夫でしょうか」
「在留カードの期限がまだ2年残っています。それまでは問題ないですよね」
「ビザの変更を申請中だそうです。審査が終わるまで休ませたほうがいいですか」
「離婚を理由に辞めてもらうことはできますか」

「日本人の配偶者等」で働いている社員が、日本人の配偶者と離婚した。この連絡を受けたとき、会社がまず知りたいのは「いつまで働かせていいのか」だと思います。ここを間違えると、会社が不法就労助長罪に問われかねません。

私は行政書士になる前、警視庁で約20年間勤務し、そのうち約10年間は入管法違反事件の捜査に従事してきました。本記事では、企業の実務に絞ったうえで、取り締まる側から何が見えていたのかという視点も交えて整理します。

なお、採用時の在留カード確認から日々の在留管理体制づくりまで、平時からの備えについては外国人雇用の企業サポートでまとめてご案内しています。

※本記事では「日本人の配偶者等」を中心に説明します。「永住者の配偶者等」もおおむね同じ考え方です。2026年8月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の判断は専門家へご相談ください。

目次

この記事のポイント【先に結論】

「日本人の配偶者等」は就労制限がなく、単純作業を含めどんな業務にも従事できます。だから採用しやすく、失われたときの影響も大きい在留資格です。
離婚しても、在留資格が取り消されるまでは有効です。在留カードが有効なら、離婚の翌日も適法に就労できます。
ただし、配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていないと、在留資格の取消し対象になります(入管法第22条の4第1項第7号)。
在留期限までに変更申請をしていれば、審査中も従前の在留資格のまま在留・就労できます(特例期間/入管法第20条第6項)。
変更先が「定住者」なら就労制限はなく、これまでどおり。「技術・人文知識・国際業務」に変わると、業務内容によっては同じ仕事を続けられません。

1.離婚した日から働けなくなるわけではない

社員から離婚の報告を受けて、翌日から自宅待機を命じてしまう会社があります。まず、そこを落ち着かせてください。

「日本人の配偶者等」は身分に基づく在留資格なので、就労制限がありません。そして離婚したからといって、その日に在留資格が自動的に消える制度にはなっていません。取り消されるまでは有効です。

ですから、在留カードが有効である限り、離婚後も適法に就労できます。根拠のない自宅待機や退職勧奨は、労働法上の問題を生むだけでなく、本人の収入を断つことで、このあと説明する変更審査まで不利にしてしまいます。

とはいえ「では期限まで放っておいてよいのか」というと、そうもいきません。

2.会社が見るべきは2つ|在留カードの期限と、離婚からの経過月数

「期限が2年残っているから大丈夫」は通用しません

入管法第22条の4第1項第7号は、「日本人の配偶者等」などの在留資格を持つ人が、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していることを、在留資格の取消事由としています。正当な理由がある場合は除かれます。

離婚が成立していれば、配偶者としての活動は行いようがありません。在留カードの有効期限が何年残っていようと、離婚から6か月を過ぎれば取消しの対象になり得る、ということです。

入管庁も、離婚した場合は速やかに帰国するか、速やかに他の在留資格へ変更するよう案内しています。期限ぎりぎりまで動かず、直前に申請しても審査は不利になります。

管理は「二軸」で

外国人社員の在留管理では、在留カードの有効期限だけを台帳で追っている会社がほとんどだと思います。身分系の在留資格については、これに「離婚からの経過月数」という軸を足してください。この二軸がそろって、はじめて「いつまで雇えるのか」を判断できます。

離婚からの期間 在留資格の状態 会社がすべきこと
〜14日 有効/就労できる 本人に入管への届出(14日以内)を案内する。変更の方針を一緒に確認する
〜3か月ごろ 有効/就労できる この時期までに変更申請を出せているのが理想。業務内容が就労系に該当し得るか点検する
6か月経過 取消しの対象になり得る 正当な理由がなく未申請なら危険水域。専門家に相談する
取消し後 就労できない 働かせれば不法就労助長罪の問題になる。就労を止める

※「6か月」は取消しの検討が始まり得る時点であって、6か月ちょうどで自動的に資格が消えるという意味ではありません。取消しには意見聴取などの手続があります。

3.元警視庁捜査員の視点|いちばん危ないのは「隠れ離婚」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

なぜ社員は会社に離婚を隠すのか

捜査の現場で見てきたなかで、企業側がいちばん痛い目に遭うのは、社員が離婚を会社にも入管にも報告しないまま働き続けているケースでした。

理由は単純で、「離婚したと知られたら、ビザがなくなって会社をクビになる」という恐怖です。とくに、就労系の在留資格へ変更できない業務に就いている社員にとって、離婚は日本での生活そのものの終わりを意味します。だから必死に隠します。

つまり会社を危険に晒しているのは、社員が抱く「クビになるのでは」という不安のほうなんです。

「知らなかった」で免れられるとは限りません

本人が隠したまま6か月が過ぎ、在留資格が取り消されれば、その社員の就労は不法就労になります。

このとき、会社が「離婚の事実を知らなかった」と説明しても、それだけで責任を免れられるとは限りません。企業には外国人の適正な雇用管理が求められていますから、確認を怠った結果として就労資格のない外国人を働かせていたと評価されれば、不法就労助長罪(入管法第73条の2)が問題になり得ます。

現行の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金ですが、2027年4月1日からは5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に引き上げられます。

隠蔽を防ぐ3つの仕組み

性善説に頼らず、仕組みで防いでください。

一つめは、定期的な確認を制度にすること。半年に1回など、在留カードの確認とあわせて、在留資格の前提に変更がないかを書面で申告してもらう運用にします。

二つめは、就業規則に明記すること。在留資格の前提となる身分に変更が生じた場合は速やかに会社へ報告する義務を定め、周知します。

三つめ。そしてこれがいちばん効きます。「離婚しても即座に辞めてもらうわけではない。変更の手続は会社として支援するから、隠さず相談してほしい」と、平時から伝えておくことです。恐怖が隠蔽を生むのですから、恐怖を取り除くのが最大の抑止力になります。

▶ 「知らなかった」が通用しない理由は、こちらの記事で詳しく解説しています

関連記事:不法就労助長罪という会社のリスク ▶

4.離婚の届出義務があるのは本人|会社の届出はどうなる?

離婚から14日以内の届出は、本人の義務です

日本人配偶者と離婚または死別した場合、外国人本人が14日以内に、出入国在留管理庁へ「配偶者に関する届出」を出さなければなりません(入管法第19条の16第3号)。市区町村へ離婚届を出す手続とは別物です。

これを怠ると、それ自体が届出義務違反ですし、その後の在留資格変更や永住許可の審査で明確なマイナスになります。会社が代わりに届け出る制度ではありませんので、本人に確実に案内してください。

会社の届出が必要になるのは、雇用が終わったときです

会社から入管への所属機関の届出(入管法第19条の17)は努力義務で、事由も受入れの開始と終了です。社員が離婚したこと自体は、会社の届出事由ではありません。

一方、退職や解雇によって雇用関係が終われば、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が必要です(労働施策総合推進法第28条)。こちらは義務で、怠れば30万円以下の罰金の対象になります。

届出 誰が 性質 離婚した場合の扱い
配偶者に関する届出(入管) 本人 義務/14日以内 必要。会社は代行できないので、本人に案内する
所属機関による届出(入管) 会社 努力義務 離婚は届出事由ではない。受入れの開始・終了が対象
外国人雇用状況の届出(ハローワーク) 会社 義務/罰則あり 離婚だけでは不要。退職・解雇で雇用が終われば必要

5.変更申請中も今の仕事を続けられる|特例期間の正しい理解

期限までに申請していれば、従前の在留資格のまま働けます

在留期間の満了日までに在留資格変更許可申請が受理されていれば、審査結果が出る日か、従前の在留期限から2か月を経過する日か、いずれか早い日まで、従前の在留資格をもって在留できます(入管法第20条第6項。いわゆる「特例期間」)。

ここが会社にとって大事なところです。従前の在留資格は「日本人の配偶者等」ですから、就労制限はありません。審査中も、それまでと同じ業務を続けられます。

「申請中だから念のため休ませる」という判断を、実務ではよく見かけます。ただ、これは最悪の選択です。収入が途切れると、変更審査で問われる生計の安定性が損なわれ、不許可に近づきます。本人を守るつもりの判断が、本人の在留を危うくしてしまうんです。

2026年6月以降の落とし穴|オンライン申請と特定在留カード

確認の場面で、会社が戸惑いやすい点が2つあります。

ひとつは、オンライン申請の場合です。在留カードの裏面に「申請中」のスタンプが押されません。窓口申請と違って、目視では申請の事実を確認できませんので、受付完了メールや受付番号を見せてもらってください。

もうひとつは、2026年6月から始まった特定在留カード(マイナンバーカード一体型)です。入管庁は、特定在留カードについても「マイナンバーカード機能に係る有効期間の満了日は、本来の在留期間の満了日までとなります」と案内しています。つまり特例期間で在留は適法に続いていても、マイナ機能のほうは元の期限で止まります。

入管庁は「本来の在留期限の満了日までに、市区町村でマイナンバーカード機能に係る有効期間の変更手続を行ってください」と案内しており、手続をしないと利用者証明用電子証明書が失効し、マイナ保険証として使用できなくなる可能性があるとされています。社員が困っていたら、市区町村の窓口を案内してあげてください。

▶ 特定在留カードの利点と注意点は、こちらの記事にまとめています

関連記事:特定在留カードの落とし穴 ▶

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6.変更先で結論が変わる|「定住者」なら継続、「技人国」なら業務内容次第

会社にとっての本当の分岐点は、離婚そのものではなく、どの在留資格に変わるかです。

「定住者」に変更できれば、これまでと同じ仕事を続けられます

「定住者」も就労制限のない在留資格です。許可されれば、業務内容を見直す必要はありません。

ただ、審査は簡単ではありません。実質的な婚姻生活の期間が重視され、別居していた期間は通常の婚姻生活とは評価されにくいとされています。あわせて、離婚後は扶養から外れるので、自立して生計を営めるかが厳しく問われます。

なお、日本人配偶者との間の実子を監護・養育している場合は、婚姻期間の要件が緩和される別のルートがあります。ただし生計の要件は同じように審査されます。

「技術・人文知識・国際業務」は、学歴と業務内容の壁があります

定住者の要件を満たさない場合、就労系の在留資格への変更を検討することになります。しかし技人国には、学歴または実務経験の要件と、業務内容が専門的であることという要件があります。

工場のライン作業、店舗での接客、清掃といった業務が中心の社員は、ここで行き詰まります。配偶者ビザだから任せられていた仕事が、そのまま変更を阻む要因になってしまう、という構造です。

会社としては、いまその社員に任せている業務が技人国に該当し得るかを、早い段階で確認しておく必要があります。該当しないのであれば、配置転換の余地があるかを社内で先に検討しておいてください。

変更先 就労の制限 主に問われること 会社への影響
定住者 なし 実質的な婚姻生活の期間/自立して生計を営めるか これまでどおり。業務の見直しは不要
定住者(実子を監護・養育) なし 実際に監護・養育しているか/生計の安定 同上。婚姻期間の要件は緩和され得る
技術・人文知識・国際業務 あり 学歴または実務経験/業務が専門的か 現業中心なら継続困難。配置転換の検討が必要
特定技能など あり 分野・試験・受入れ体制など個別の要件 受入れ機関としての体制整備が別途必要

7.会社にできること|雇用継続の意思が、本人の在留を支える

企業の方に最もお伝えしたいのがここです。会社は傍観者ではありません。

「定住者」への変更審査では、日本で自立して生活していけるかが正面から問われます。正社員や契約社員として安定した仕事に就いていることは、ここで強く働きます。

会社が雇用を続けるという事実そのものが、本人が日本に残れるかどうかを左右する、ということです。会社が出せるものとしては、在職証明書、雇用契約書の写し、直近の給与明細や源泉徴収票などがあります。引き続き雇用する意思があることを、書面で示すこともできます。

もちろん、事実に反する内容を書いてはいけません。ただ、事実として雇用を続けるのであれば、それを正確に書面化することは、会社にしかできない支援です。

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在留カードの確認記録、身分系の在留資格の定期確認、就業規則への報告義務の明記。これらを一式で整えるご支援をしています。

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8.外国人社員の離婚|企業の対応チェックリスト

在留カードの写しで、在留資格の種類と有効期限を確認した
離婚が成立した日を確認し、そこからの経過月数を記録した
本人に、14日以内の入管への届出を案内した
在留資格の変更方針(定住者か就労系か)を本人に確認した
変更申請の受理を確認した(オンライン申請なら受付番号)
申請中も従来どおり就労させる方針を、社内で共有した
現在任せている業務が、就労系の在留資格に該当し得るか点検した
在職証明書など、会社が出せる書類を準備した
身分系の在留資格の社員について、定期確認の運用を整えた

9.よくある質問|社員への確認・不許可・再婚・申請取次

Q1.社員に離婚したかどうかを会社から聞いてもよいのですか?

私生活を詮索する形は避けるべきですが、在留資格の管理として確認すること自体は必要です。

おすすめは、聞き方を変えることです。「離婚しましたか」ではなく、「在留資格の前提に変更はありませんか」と尋ねる。そして特定の社員だけに聞くのではなく、身分系の在留資格の社員全員に対する定期確認として、就業規則や社内ルールに位置づけて実施する。この形なら目的が在留管理であることが明確になりますし、本人も答えやすくなります。確認の際は、なぜ必要なのかを必ず説明してください。

Q2.在留資格の変更が不許可になったら、すぐ退職してもらうしかないのですか?

不許可=即日退職ではありません。通常は出国準備のための期間が指定され、その間に別の在留資格での再申請を検討できる場合もあります。

とはいえ、就労できない状態が続けば雇用の継続は難しくなります。大切なのは順番です。まず不許可の理由を確認し、再申請の余地があるかを専門家と検討する。そのうえで雇用について判断する。理由も分からないまま退職を促すと、再申請の道まで閉ざしてしまいます。

Q3.社員がすぐに別の日本人と再婚しました。そのまま雇用を続けてよいですか?

「再婚したから在留資格は元どおり」とは考えないでください。いまの在留資格は前の婚姻を前提に許可されたもので、その前提はすでに失われています。新しい婚姻に基づいて、あらためて在留資格の変更または更新の手続が必要です。

加えて、離婚から短期間での再婚は、審査で慎重に見られる傾向があります。会社としては、手続が済んでいるかを在留カードで確認するまで、安心しないことです。

Q4.在留資格の変更申請を、会社が代わりに提出できますか?

在留諸申請は本人の出頭が原則ですが、申請等取次者の承認を受けた職員がいる企業であれば、会社が取り次ぐことができます。申請取次の資格を持つ行政書士や弁護士に依頼する方法もあります。

ただ、いずれの場合も本人の意思が前提です。会社が本人の意向を確認しないまま手続を進めることはできません。

また、取り次げることと、申請書類を作成できることは別です。2026年1月施行の行政書士法改正により、報酬を得て在留手続の書類を作成できるのは行政書士などに限られることが、一層明確になりました。詳しくはその書類作成、違法かもしれませんをご覧ください。

10.まとめ|期限と経過月数の二軸で管理する

外国人社員から離婚の報告を受けたとき、会社がすべきことは、雇用を切る判断でも、慌てて入管へ連絡することでもありません。

離婚した日から働けなくなるわけではない。けれども在留カードの期限だけを見ていては危ない。会社が持つべきは、期限と離婚からの経過月数という二軸の管理です。

そして変更申請中は、それまでと同じ仕事を続けられます。ここで念のため休ませると、収入が途切れ、変更審査の生計要件に跳ね返ってきます。

最後にもうひとつだけ。この問題で会社を危険に晒すのは、社員の離婚そのものではなく、「クビになるかもしれない」という恐怖から生まれる隠蔽です。平時から「隠さず相談してほしい、会社として支援する」と伝えておくこと。それが結果として、会社自身を守ります。

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※本記事は2026年8月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。在留資格の変更の可否、雇用の取扱いは、在留資格の種類、婚姻の経緯、業務内容など個別の事情により判断されます。法令および運用は変更されることがありますので、実際の対応にあたっては最新の公式情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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この記事を書いた人

TAMAフロンティア行政書士事務所 代表

毛呂 敦(もろ あつし)

行政書士 毛呂敦 入管業務を専門とする行政書士。警視庁で約20年間勤務し、うち約10年を国際捜査官として入管法実務に従事。現場で得た知見を活かし、東京・多摩地区(ご相談場所は立川駅)を拠点に、外国人のビザ申請と企業の外国人雇用をサポートしています。
行政書士(登録番号 第26081692号)
外国人雇用管理主任者
元警視庁 国際捜査官
TOPIK(韓国語能力試験)上級
技能実習監理責任者講習 受講済



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