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人身事故を起こした外国人の方へ|罰金・不起訴とビザ更新

元警視庁入管法捜査員の行政書士が解説

人身事故を起こしても、それだけでビザを失うわけではありません。分かれ目は「どう終わったか」です

車やバイクで事故を起こしてしまった。このあと自分の在留資格(ビザ)はどうなるのか。そう不安を抱えている方に向けて、事故のあとに何が起き、在留資格にどこまで影響するのかをお話しします。物件事故(物損事故)の扱い、警察に届け出なかった場合、そして2026年7月21日に施行された危険運転致死傷罪の改正まで含めて解説します。

車やバイクを運転する外国人が、このような心配をされることがよくあります。

「事故を起こしました。もう日本にいられないのでしょうか」
「罰金を払いました。次の更新の申請書に書かないといけませんか」
「不起訴になったと聞きました。それでも書く必要がありますか」
「免許が取り消されました。これも『処分』として書くのでしょうか」
「物損事故でした。ビザに影響しますか」

先に結論をお伝えします。人身事故を起こしたからといって、それだけでビザを失うわけではありません。決め手になるのは、最終的にどんな処分で終わったかです。罰金(略式命令)は刑罰ですから、申請書には必ず「有」と書きます。不起訴で終わったなら刑罰は受けていません。免許停止や免許取消は刑罰ではなく行政処分ですが、設問の書きぶり次第では、あわせて説明しておいたほうがいい場面もあります。そして審査では、事故そのものよりも被害者にどう向き合ったかのほうが重く見られます。

私は行政書士になる前、警視庁で約20年間勤務し、うち約10年間は入管法違反事件の捜査に従事してきました。取り締まる側と審査される側、両方の現場を見てきた立場から、できるだけやさしく整理します。

当事務所では、交通事故のあとの在留期間更新・在留資格変更をサポートしています。ご自身の処分が申請書の記載対象になるかどうかは、無料の簡易診断でも確認できます。はじめての方ははじめての方へ|何から読む?もあわせてご覧ください。

※本記事は2026年8月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。刑事手続の見通しは弁護士の領分であり、本記事は弁護活動に代わるものではありません。在留資格については専門家へご相談ください。

目次

この記事のポイント【先に結論】人身事故はビザ更新にどう影響するか

事故には刑事・行政・民事の3つの責任が別々に発生します。申請書に直接関係するのは、このうち刑事責任だけです。
罰金(略式命令)は刑罰なので、申請書の「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無」は「有」不起訴と、免許停止・免許取消は刑罰ではないため、直ちに「犯罪を理由とする処分」には当たりません。ただし申請書には「※交通違反等による処分を含む。」という注記があり、設問の書きぶりや申請の種類によっては、別途説明しておいたほうがよい場面もあります(第4章)。
人身事故は通常、反則金で終わる交通反則通告制度(青切符)ではなく、刑事事件として扱われます。多くは罰金か不起訴のどちらかで終わります。
物件事故(物損事故)そのものは、通常は刑事処分の対象ではなく、点数もつきません。ただし警察への報告義務違反など別の違反があれば罰金という刑罰を受け、記載対象になり得ます。
示談や保険の対応は刑事処分を左右し、それが在留審査にも効いてきます。無保険での事故がいちばん危険です。
2026年7月21日施行の改正で、飲酒や大幅な速度超過の事故は危険運転致死傷罪に問われる範囲が明確化されました。罰金刑がなく、在留への影響は段違いです。

1.人身事故で発生する3つの責任|刑事・行政・民事とビザへの影響の違い

まずはここを分けて理解するところからです。混同したまま考えると、必要のない不安を抱えることになります。

刑事責任は、運転に必要な注意を怠って人を死傷させた場合の過失運転致傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第5条)です。法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。飲酒や著しい速度超過など悪質な場合は、より重い危険運転致死傷罪(同法第2条・第3条)が問題になります。

行政責任は、公安委員会が行う処分です。人身事故には事故の程度と不注意の大きさに応じて付加点数がつき、一定に達すると免許停止、さらに重ければ免許取消になります。これは刑罰ではありません。ここが申請書の書き方を分ける、いちばん大事な分岐点です。ただし「刑罰ではない=入管と無関係」ではありませんので、第4章で改めて触れます。

民事責任は、被害者への治療費や慰謝料などの賠償で、刑事処分の有無にかかわらず発生します。通常は任意保険会社が窓口になります。

責任の種類 具体的な内容 申請書への記載 在留審査への影響
刑事責任 罰金・拘禁刑(前科がつく) 記載が必要 直接影響する
行政責任 違反点数・免許停止・免許取消 直ちには当たらない(設問次第で説明が必要) 仕事の継続や永住審査に影響することがある
民事責任 治療費・慰謝料などの損害賠償 記載義務なし 対応の姿勢が評価される

2.人身事故は刑事事件として扱われる|物損事故との違いと処分が決まるまでの流れ

「事故を起こしたのに切符をもらっていない」と不安になる方がいますが、おかしなことではありません。人身事故そのもの(過失運転致傷など)は道路交通法違反ではなく自動車運転死傷行為処罰法違反にあたり、反則金を納めれば終わる交通反則通告制度(いわゆる青切符)の対象ではないからです。人身事故は通常、この制度ではなく刑事事件として扱われ、捜査が進みます。なお、同じ事故のなかで信号無視や酒気帯びといった道交法違反も犯していれば、そちらには別途、青切符や赤切符が切られることがあります。

物損事故(物件事故)は、点数も刑事処分も原則つきません

けが人がおらず、車や物が壊れただけの事故を物件事故(物損事故)といいます。実務ではこちらのほうが圧倒的に多く、扱いは人身事故とまったく違います。

付加点数がつくのは人身事故と建造物損壊事故だけで、車同士がぶつかった通常の物件事故では点数は加算されません。刑事責任も原則として発生しません。警察の処理で物件事故のまま終わり、ほかに違反もなければ、申請書に書くべき事項は通常生じません。

ただ、「物損だから何もない」と決めつけるのは危ないです。信号無視や酒気帯びなど別の違反が伴っていればそちらは当然に処理されますし、その場で警察に届け出なければ報告義務違反という刑罰の対象になります(第7章)。さらに、物件事故として処理されたあとに被害者が診断書を出すと、人身事故へ切り替わることも実務上よくあります。

調書ができ、送致され、多くは罰金か不起訴で終わります

事故現場では実況見分が行われて実況見分調書が作られ、その後、当事者や目撃者の話をもとに供述調書が作られます。この2つが、あとの処分と過失の評価を大きく左右します。日本語に不安がある方は、必ず通訳を求めてください。状況を正確に伝えられないまま調書ができると、あとから覆すのは簡単ではありません。

捜査が終わると、事件は書類とともに検察官へ送致されます。身柄を拘束されずに進むことも多く、その場合は「書類送検」と呼ばれます。送致は事件を引き継ぐ手続であって、起訴されたという意味ではありません。

検察官は、事故の態様、過失の程度、被害の大きさ、示談の有無などから起訴・不起訴を決めます。起訴される場合でも多くは略式手続で、罰金の納付で終わります。被害が比較的軽く示談が済んでいれば、起訴猶予として不起訴になることが多いです。人身事故を起こした方の多くは、罰金か不起訴のどちらかで終わります。ここから先が、ビザにとっての本題です。

▶ 交通違反と申請書の関係は、こちらの記事で詳しく解説しています。
交通違反は申請書に書くべきか反則金を払わないとどうなるか

3.元警視庁捜査員の視点|隠し通せる前提は、もう成り立ちません

申請書の書き方に入る前に、捜査の側にいた人間として、どうしてもお伝えしておきたいことがあります。

「黙っていればバレない」は、まず通用しない

「事故を届け出たらビザの更新に響くのでは」と考えて、その場で「大丈夫です」とやりとりをして別れてしまう方が、実際にいらっしゃいます。大したことなければ面倒だという気持ちは分かります。ただ、ドライブレコーダー、防犯カメラ、目撃者の通報。現場に残された部品の破片など車種が絞られることもあります。

何より、その場では何も言わなかった相手が、翌日に痛みを訴えて届け出る例が本当に多いのです。そのときあなたは「事故を起こした人」ではなく「事故を起こして逃げた人」として扱われます。出発点がまったく違ってしまいます。

しかも、届け出ていなければ交通事故証明書が発行されず、任意保険を使えないことがあります。賠償ができなければ示談は成立せず、示談がなければ起訴されやすくなり、罰金が確定する。全部つながっているのです。

審査官がもっとも嫌うのは「事実と申告のずれ」

外国人の交通事故を扱った時、当事者から「これで人生が終わりだ」と言われることが何度かありました。ただ、審査の実務を知る立場から申し上げると、それは正確ではありません。更新で見られているのは、事故を起こしたという一点ではなく、そのあとどう行動したかです。

そして審査官がもっとも嫌うのは、事実と申告が違っていることです。罰金を受けているのに「無」と書く。過去の申請では書かなかったのに今回だけ書く。こうした食い違いは、事故そのものより重く扱われます。書類は残り、記録は照合されますから。

調書の内容はちゃんと確認をして署名しましょう

少しビザ申請から話が逸れますが、事故の直後、動揺してよく理解しない状態で調書に署名してしまう方がいます。過失の割合を決めるうえで調書も重要な評価基準です。分からないことは分からないと述べ、通訳を求める。これは正当な権利です。

いずれにしても、すでに届け出ていないことに気づいた方は、時間が経っていても、できるだけ早く警察に申し出てください。自ら出頭した事実は、その後の処分の判断で考慮され得ます。放置して相手方から届け出られるのと、自分から申し出るのとでは、立場がまるで違います。迷う場合は、警察へ行く前に弁護士へご相談ください。

▶ なぜ元捜査員が入管業務を専門にしているのか、どんな視点で申請を組み立てているのかは、こちらに書いています。
元捜査員が行政書士になった理由当事務所の強み

4.ビザ申請書に人身事故は書く?|罰金は「有」、不起訴・免許取消の扱い

在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請のいずれの様式にも、次の欄があります。

「犯罪を理由とする処分を受けたことの有無(日本国外におけるものを含む。)※交通違反等による処分を含む。」

この欄が申告を求めているのは、罪を犯したことを理由に科される刑罰です。まずは「それは刑罰か、そうでないか」で切り分けます。

気をつけたいのが、末尾の「※交通違反等による処分を含む。」という注記です。この趣旨を入国在留管理局に確認した実務家の報告では、「罰金刑以上を書くように。行政罰は書かなくてよい」との回答が示されており、記載義務の範囲そのものが広がったわけではないと考えられています。ただ同時に、軽微な交通違反であっても申し出ておくほうが望ましいという見解も示されています。書かなかったことが後になって「隠した」と受け取られるのを避けるためです。

整理すると、罰金以上は必ず記載。行政処分は法的な記載義務まではないけれど、設問の書きぶりと申請の種類によっては説明しておいたほうが安全、ということになります。とくに将来の永住許可申請を考えている方は、自分から明らかにしておくメリットのほうが大きい場面が多いです。

罰金(略式命令)を受けた場合 → 必ず「有」

罰金は刑罰であり、前科がつきます。「交通事故だから犯罪ではない」という理解は誤りです。何年前のことであっても記載します。出入国在留管理庁のQ&Aでも、過去何年前までという限定はなく、処分を受けたことがあればすべて記載するよう案内されています。

不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分)→ 記載義務の対象外

不起訴は検察官が起訴しないと判断したもので、刑罰を受けていません。ですから、この欄の記載義務の対象ではありません。

ただ事故の事実そのものが消えるわけではありません。更新の理由書のなかで、事故があったこと、被害者に誠実に対応したこと、その後は無事故で過ごしていることを、自分から説明したほうがよい場合があります。

▶ 不起訴だった場合の申請書の書き方は、こちらで詳しく解説しています。
不起訴・起訴猶予のときの書き方

免許停止・免許取消 → 刑罰ではないが、扱いは慎重に

ここを勘違いしている方が本当に多いです。免許停止も免許取消も公安委員会が行う行政処分であって、刑罰ではありません。この欄でいう「犯罪を理由とする処分」には直ちに当たらず、記載義務の対象外というのが原則です。ただし、申請書の設問の書きぶりや入管からの照会によっては、別途説明を求められることがあります。

ただし、「だから一切書かなくてよい」と決めつけるのは避けてください。理由が3つあります。

免停・取消の原因になった違反が赤切符(酒気帯び、無免許、大幅な速度超過など)なら、その違反自体で罰金を受けている可能性が高く、そちらは「有」の対象です。行政処分と刑事処分はセットで生じることがあると考えてください。
申請書の設問や、入管から届く資料提出通知書の問い合わせ内容によっては、刑罰以外の処分歴を別途たずねられることがあります。設問に即して答えてください。
永住許可申請では、素行の善良性が正面から審査されます。刑罰に当たらない交通違反歴でもマイナスに評価されることがあり、隠していたと受け取られると回復が困難です。

申請書に「書く/書かない」早見表

受けたもの 刑罰か 申請書の記載 補足
罰金(略式命令) 刑罰 「有」 何年前でも記載。前科がつきます
拘禁刑(実刑・執行猶予) 刑罰 「有」 執行猶予でも記載します
不起訴(起訴猶予など) 刑罰ではない 対象外 理由書での説明が有効な場合あり
免許停止・免許取消 行政処分 義務としては対象外(設問次第で説明を) 原因の違反で罰金があればそちらは「有」。永住申請では申告が無難
違反点数・反則金(青切符) 行政上の措置 義務としては対象外 入管は申告が望ましいとの見解。反則金未納だと刑事手続に移行
物損事故で終わった 処分なし 通常は生じない 未申告なら報告義務違反で罰金。後日、人身へ切り替わる場合も

書かないリスクのほうが、書くリスクより大きい。刑罰を隠して許可を受けた場合は、在留資格の取消しにつながり得ます(入管法第22条の4)。判断に迷ったら、記載する前にご相談ください。過去に不許可を経験された方は不許可になった後、どう再申請するかもご覧ください。

5.人身事故で強制送還になるのは?|退去強制事由と2026年7月改正の危険運転致死傷罪

「有罪になったら強制送還ですか」というご質問をよくいただきます。ここは正確に押さえておいてください。

無期または1年を超える拘禁刑の実刑判決を受けた場合は、退去強制事由に当たります(入管法第24条第4号リ)。執行猶予がついた場合は除かれます。過失運転致傷で1年を超える実刑となるのは、被害が重大な場合などに限られます。

また、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能、留学、家族滞在など)の方については、刑法の一定の罪などで拘禁刑に処せられた場合、執行猶予つきでも退去強制事由に当たり得る規定があります(同法第24条第4号の2)。ただしこの規定が挙げているのは刑法の特定の章(傷害、窃盗、強盗、詐欺など)や暴力行為等処罰ニ関スル法律などで、自動車運転死傷行為処罰法は入っていません。通常の人身事故(過失運転致傷)は、執行猶予がついた時点で直ちに退去強制、という関係にはなりません。

問題は、飲酒運転や薬物の影響下での事故、著しい速度超過の事故です。こちらは扱いがまったく変わります。

【2026年7月21日改正】危険運転致死傷罪に数値基準が入りました

改正自動車運転死傷処罰法が2026年6月に成立し、2026年7月21日から施行されました。これまで「正常な運転が困難な状態だったか」という評価に幅があった部分に、数値の基準が入っています。

類型 改正後の内容 実務上の意味
アルコール 血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム以上、または呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態 呼気0.5mgは酒気帯び運転の基準(0.15mg)の3倍以上。数値で認定される範囲が明確に
高速度運転 最高速度が時速60km以下の道路では+50km超、時速60km超の道路では+60km超の速度(およびこれに準ずる速度)で運転する行為を追加 一般道で時速90km超などが、危険運転として捉えられ得ます
ドリフト走行 殊更にタイヤを滑らせ、または浮かせることにより進行の制御が困難な状態にさせて走行する行為を追加 遊び目的の走行も対象になり得ます

危険運転致傷になると、在留資格にとっての重さがまるで変わります。理由は3つです。

罰金刑がありません。法定刑は15年以下の拘禁刑(同法第2条)。「罰金を払って終わり」という道がなく、正式な裁判になります。
1年を超える実刑になれば、退去強制事由に当たります(入管法第24条第4号リ)。過失運転致傷とは量刑の水準がまったく違います。
起訴されれば身柄拘束が長引きやすく、在留資格に定められた活動が長期間できない状態になります。これ自体が在留資格の取消し事由につながり得ます(同法第22条の4)。

なお、飲酒運転そのもの(酒気帯び運転・酒酔い運転)は道路交通法違反で、事故がなくても刑罰の対象です。「少しだけなら大丈夫」という判断が、在留資格を失う入口になります。ここだけは、例外なく守ってください。

▶ 飲酒運転そのものの罰則、在留資格・ビザ更新への影響、車を貸した会社の責任は、こちらで詳しく解説しています。
飲酒運転と在留資格

▶ 身柄を拘束されたあとの流れと、更新への影響はこちらで詳しく解説しています。
不起訴なら申請書は「無」でいいか/交通違反とビザの記事はこちらの一覧にまとめています。

※懲役・禁錮は2025年6月に「拘禁刑」へ一本化されています。本記事では現行の呼び方に統一しています。

6.示談と任意保険はビザ審査で評価される?|不起訴を左右するのは事故後の対応

示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思を示していれば、起訴猶予として不起訴になる可能性が高まります。不起訴なら前科はつかず、申請書に書く必要もありません。示談は民事の話でありながら、刑事処分を通じて在留資格にまで影響してくるわけです。事故直後の対応が、数年後の更新につながっています。

逆に、いちばん危ないのが任意保険に入っていない状態です。自賠責保険だけでは賠償しきれないことがあります。賠償ができなければ示談も進まず、被害者の心情も収まりません。結果として起訴されやすくなり、罰金が確定し、申請書に書く事項が増えていきます。在留審査でも、十分な賠償をしていない状態は素行の評価として厳しく見られます。まだ任意保険に入っていない方は、この記事を読み終えたら加入を検討してください。永住申請を考えている方なら、なおさらです。

入管に提出できる資料の例

更新の際に事故について説明する必要があると判断した場合は、次のような資料を準備するといいでしょう。

示談書、または保険会社を通じた賠償の記録
任意保険の加入を証明する書類
不起訴処分告知書(検察庁に請求すれば交付を受けられます)
運転記録証明書(自動車安全運転センターで取得。過去5年分が確認できます)
現在の勤務状況や生活状況を示す資料

▶ 申請後に入管から追加資料を求められることもあります。対応の手順はこちら。
追加資料の出し方と期限

7.交通事故を警察に届けないとどうなる?|報告義務違反・当て逃げ・ひき逃げとビザ

第2章のとおり、物件事故そのものは通常、刑事処分の対象ではなく、点数もつきません。もっとも、警察への報告義務違反など別の違反があれば、記載対象になり得ます。

ところが、警察への報告を怠ると話が変わります。事故を起こした運転者には警察官への報告義務があり(道路交通法第72条第1項後段)、これに違反すると3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金の対象です(同法第119条第1項第17号)。

届け出ていれば何も残らなかったはずなのに、届け出なかったことで罰金という刑罰を受け、申請書に「有」と書く事項を自分で作り出してしまいます。

当て逃げ・ひき逃げになると、重さがまったく変わります

立ち去り方 問われる違反 刑罰の重さ ビザへの影響
その場で届け出た(物損) なし なし 原則なし
届け出なかった(不申告) 報告義務違反
(道交法72条1項後段)
3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金 罰金なら申請書は「有」
物を壊して立ち去った(当て逃げ) 危険防止措置義務違反+報告義務違反 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 違反点数も加算され、素行面で不利
人にけがをさせて立ち去った(ひき逃げ) 救護義務違反
(道交法117条2項)
10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 違反点数35点で免許取消。1年超の実刑なら退去強制事由

在留資格への影響は段違いです。1年を超える拘禁刑の実刑となれば退去強制事由に当たります(入管法第24条第4号リ)。そこまで至らなくても、更新審査で「逃げた」という事実がどう評価されるかは、簡単に想像できると思います。

▶ 在留カードの携帯や住居地の届出など、日本で暮らすうえでの基本ルールはこちらにまとめています。
持ち歩かないとどうなるか

8.免許取消になったら仕事とビザはどうなる?|在留資格取消しの「3か月ルール」

刑事処分とは別に、こちらが現実的な問題になる方もいます。運転が業務の中心である在留資格の場合、免許を失うと在留資格に定められた活動そのものができなくなります。特定技能の自動車運送業分野などが典型です。

在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない状態は、在留資格の取消しの対象になり得ます(入管法第22条の4第1項第6号)。正当な理由がある場合は除かれますが、免許取消が自分の違反によるものであれば、正当な理由と認めてもらうのは容易ではありません。勤務先と早めに相談し、配置転換などで活動を継続できないかを検討してください。

一方、事務職や技術職など運転が業務の中心でない場合は、免許を失っても在留資格の活動そのものには影響しません。通勤方法を変えるなどの調整で足ります。

▶ 退職・転職が絡む場合は、届出と「3か月ルール」の関係もあわせてご確認ください。
辞めた後、いつまでに動くべきか14日を過ぎてしまったら
就労ビザ全般の要件は就労ビザ申請サポートのページで解説しています。

9.人身事故とビザ更新についてのよくある質問

Q1.物損事故として処理されましたが、後日相手が「痛い」と言い出しました。人身事故になりますか?

なる可能性が高いです。被害者が医師の診断書を警察に提出すると、物件事故から人身事故へ切り替わります。それまでつかなかった付加点数がつき、過失運転致傷として刑事手続が始まります。

大切なのは2つ。切り替わった時点ですぐ保険会社に連絡すること。そして当初の説明と食い違うことを後から言わないことです。物件事故の段階で話した内容は記録に残っていますから、話が変わればそれ自体が不利に働きます。

Q2.違反点数や免許停止の記録は、入管に伝わりますか?

違反点数や行政処分の記録が、自動的に入管へ共有される仕組みにはなっていません。ただ「入管が知り得ない」という意味ではありません。審査のテーブルには載っていると考えた方がいいです。

自動車安全運転センターで運転記録証明書を取得すれば、過去5年分の違反歴をご自身で確認できます。オンライン申請も可能です。とくに永住申請を考えている方は、交通違反歴が素行の評価に直結しますので、早めに把握しておいてください。

Q3.会社の車で事故を起こしました。会社にも責任がありますか?

刑事責任は、自分の車でも会社の車でも変わりません。一方、賠償の面では、業務中の事故であれば会社も使用者責任を負うのが原則です(民法第715条)。保険も通常は会社の車両保険で対応します。

事故によって会社に入管への届出義務が生じるわけではありませんが、勤務先には早い段階で正直に報告してください。あとから発覚するほうが、雇用の面でも更新の面でも不利です。企業側の対応は逮捕の当日から、会社は何をすべきかで解説しています。

Q4.捜査が終わる前に、一度母国へ帰ってもよいですか?

問題にならないことが多いですが、慎重に判断してください。捜査中は、警察や検察から出頭を求められることがあります。連絡が取れない状態が続くと、処分の判断に影響しかねないので、せめて連絡はとれる状態でいることをおすすめします。

出国そのものは、再入国許可またはみなし再入国許可の範囲で可能です。ただし、在留期間の更新を申請したあとに出国すると、審査中の在留を認める特例期間の扱いが失われます(入管法第20条第6項・第21条第4項)。出国の前に、必ず捜査機関と専門家の両方に確認してください。

Q5.被害者から高額な示談金を求められています。払えない場合はどうなりますか?

まず、ご自身で金額を約束しないでください。任意保険に加入していれば、示談交渉は保険会社が行います。安易に書面へ署名すると、保険で対応できない負担を自分で背負うことになります。

保険で足りない場合でも、分割払いなど誠実に対応した経過を記録に残すことが大切です。審査で見られているのは、支払いきったかどうかだけではなく、被害者から逃げなかったかどうかです。

まとめ|審査官が見ているのは事故ではなく「そのあと」

事故を起こしてしまったこと自体で、日本にいられなくなるわけではありません。押さえるところは3つです。

刑事・行政・民事の3つの責任は別物です。申請書に必ず書くのは刑罰、つまり罰金や拘禁刑。免許停止や免許取消は行政処分で、それ自体は直ちに「犯罪を理由とする処分」には当たりませんが、申請書の設問次第では別途説明が必要なこともあります。原因となった違反で罰金を受けていればそちらは「有」ですし、永住申請では申告しておくほうが安全です。
それでも警察には必ず届け出てください。届け出なければ報告義務違反となり、本来なら何も残らなかったところに罰金という刑罰が残ります。逃げれば、当て逃げ・ひき逃げとして重さが跳ね上がります。
不起訴で終われば前科はつきません。そして不起訴になるかどうかは、被害者との示談に大きく左右されます。事故直後の対応が、数年後の更新につながっています。

不安なまま自己判断で書類を出す前に、まずご自身の処分が何だったのかを確定させてください。そこが決まれば、書くべきことは自然に決まります。まだ処分の内容がはっきりしない方は、無料の簡易診断から確認してみてください。

交通事故のあとの在留期間更新が不安な外国人の方・雇用する企業の方へ

次のような状況の方は、更新の申請書を書き始める前にご相談ください。処分の内容を確定させ、書くべきことを一緒に整理します。

罰金を払ったが、申請書に「有」と書いてよいのか判断がつかない
不起訴になったが、更新の理由書で説明すべきか迷っている
過去の申請で交通違反を書かなかったことが気になっている
免許取消で業務が続けられず、在留資格の活動が止まりそうだ
事故を起こした外国人社員について、会社としてどう対応すべきか知りたい

当事務所は入管業務を専門とする行政書士事務所です。元警視庁入管法捜査員として入管法違反事件の捜査に約10年間従事した経験をもとに、受けた処分が刑罰なのか行政処分なのかを確認し、申請書の記載、説明書、そろえるべき資料を整理します。ひとりで抱え込まず、まずはご相談ください。料金は料金ページで公開しています。外国人を雇用する企業の方は外国人雇用 企業サポートをご覧ください。

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【法令・情報の根拠】

  • e-Gov法令検索「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(第2条、第3条、第5条)
  • 法務省「危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法)の法改正Q&A」(2026年7月21日施行の改正)
  • 神奈川県警察「自動車運転死傷処罰法の一部改正について」(令和8年7月21日施行/アルコール・高速度・ドリフト走行の各類型)
  • e-Gov法令検索「道路交通法」(第72条第1項前段・後段、第117条第1項・第2項、第117条の5第1項第1号、第119条第1項第17号)/「道路交通法施行令」(別表第2の3 交通事故の付加点数)
  • e-Gov法令検索「民法」(第715条 使用者責任)
  • e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(第20条第6項、第21条第4項、第22条の4、第24条第4号リ、第24条第4号の2、第26条、第26条の2)
  • 出入国在留管理庁「在留諸申請の申請書様式」「よくある質問(在留管理制度)」「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」「永住許可に関するガイドライン」
  • 警視庁「交通事故の付加点数」/自動車安全運転センター「運転経歴に係る証明書(運転記録証明書)」

※本記事は2026年8月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。刑事処分の見通しは弁護士の領分であり、本記事は弁護活動に代わるものではありません。申請書の記載や更新への影響は、在留資格の種類、処分の内容、個別の事情により判断されます。法令・運用は変更されることがありますので、実際の手続にあたっては最新の公式情報をご確認いただくか、専門家へご相談ください。

この記事を書いた人

TAMAフロンティア行政書士事務所 代表

毛呂 敦(もろ あつし)

行政書士 毛呂敦 入管業務を専門とする行政書士。警視庁で約20年間勤務し、うち約10年を国際捜査官として入管法実務に従事。現場で得た知見を活かし、東京・多摩地区(ご相談場所は立川駅)を拠点に、外国人のビザ申請と企業の外国人雇用をサポートしています。
行政書士(登録番号 第26081692号)
外国人雇用管理主任者
元警視庁 国際捜査官
TOPIK(韓国語能力試験)上級
技能実習監理責任者講習 受講済



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