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ホテル・旅館の外国人採用とビザ更新|「技人国」が危ない理由

元警視庁入管法捜査員の行政書士が解説

フロント業務そのものは、技人国で認められています。落ちるのは「フロント以外」です

──ホテル・旅館・リゾート施設の採用ご担当者様向け

▶ 「フロントで採用したいのですが、技人国で通りますか」
▶ 「最初の1年は研修で、レストランと客室も経験させたいのですが」
▶ 「日本語能力試験のN2がないと、もう採用できないのでしょうか」
▶ 「日本人スタッフと同じ仕事をさせるつもりです。それでも駄目ですか」

宿泊業のご担当者様から、よく届くご相談です。

宿泊業は、入管の運用が細かく公表されている、数少ない業種です。出入国在留管理庁は「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」の別紙5に「ホテル・旅館等における就労」を置き、許可事例7件と不許可事例6件を示しています。そこに2026年(令和8年)4月15日、言語能力の取扱いが加わりました。

判断材料は、すでに公開されています。あとは、自社の求人票とシフト表が、その材料に耐えうるかどうかです。

私は行政書士になる前、警視庁で約20年間勤務し、うち約10年は入管法違反事件の捜査に従事してきました。現場の実態がどう確認されるのかを見てきた立場から、宿泊業の採用について整理します。

※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。個別の判断は、業務内容・学歴・報酬・企業規模によって変わります。入管庁の公表資料から確認できる内容、筆者の見立て、実務上の目安は区別して記載しています。

目次

この記事のポイント【先に結論】

▶ ホテル・旅館のフロント業務は、それだけで技人国の対象外になるわけではありません。入管庁自身が、外国語を用いたフロント業務を許可事例として示しています。
▶ 合否を分けるのは3つです。①フロント以外の業務(清掃・配膳・荷物運搬)の割合、②学歴・職歴との関連性、③日本人と同等額以上の報酬。
▶ 2026年4月15日以降、カテゴリー3・4の申請では、主に言語能力を用いる対人業務についてCEFR・B2相当の資料が求められます。入管庁は、その対象として「ホテルフロント業務等の接客」を名指しで例示しました。
▶ CEFR・B2相当を示す方法は、日本語能力試験N2だけではありません。BJTで400点以上、本邦の大学卒業など、複数の道があります。
▶ 最大の落とし穴は「最初の1年は研修で配膳・清掃も」です。研修が認められるかは、一回の在留期間ではなく今後活動が想定される期間全体で見られ、会社の過去の運用実績も審査に影響します。
▶ そして、これは申請が通る・通らないだけの話ではありません。技人国の方に清掃・配膳を常態的にさせていれば、本人は資格外活動、会社は不法就労助長罪(入管法73条の2)のリスクを負います。2027年4月1日からは法定刑が5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に引き上げられます。
▶ 当事務所へのご相談は、①採用前の適合診断と技人国の申請、②在籍者の業務を就労資格証明書で棚卸しすることの2本柱です。清掃・配膳が相当量含まれる働き方なら、制度としては特定技能「宿泊」分野への変更が素直です。

1.ホテル・旅館のフロントは技人国で採用できる|合否を分ける3つのポイント

まず、いちばん多い誤解を解いておきます。「接客は現場作業だから技人国では無理」——これは正しくありません。

入管庁の別紙5「ホテル・旅館等における就労」には、外国語を用いたフロント業務を中心とする許可事例が、大学卒・専門学校卒の双方について複数挙がっています。フロント業務が職務の中心であっても、許可されているということです。

では、何が合否を分けるのか。公表されている事例を並べると、判断のポイントは3つに整理できます。

① 業務の構成|客室清掃、レストランの配膳、荷物運搬、駐車誘導が、在留期間の主たる活動になっていないか
② 学歴・職歴との関連性|何を学んだ人が、どの業務に就くのか。ここがつながっていないと、同じフロント業務でも結論が変わる
③ 報酬|日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上であること。基準省令の要件であり、金額が低ければそれだけで不許可になる

この3点のうち、企業が採用前に手を打てるのは、実は全部です。順番に見ていきます。

2.入管庁が公表した許可7件・不許可6件|ホテル・旅館の技人国事例で線を引く

別紙5の事例は、そのまま採用設計のチェックリストになります。要点を抜き出します。

許可された7件|「外国語を使う」「企画する」「分析する」が職務に入っている

学歴・職歴 従事する業務 報酬
本国の大学で観光学科を卒業 外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としての館内案内等 月額約22万円
本国の大学を卒業 集客拡大のための本国旅行会社との交渉における通訳・翻訳、従業員への外国語指導等 月額約20万円
本邦の大学で経済学を専攻 集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向け宣伝媒体の作成などの広報業務等 月額約25万円
本邦の大学で経営学を専攻 外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案等 月額約30万円
本邦の専門学校で翻訳・通訳コースを専攻(専門士) フロントでの外国語を用いた案内、外国語版ホームページ作成、館内案内の多言語表示のための翻訳等 月額約20万円
本邦の専門学校でホテルサービス・ビジネス実務を専攻(専門士) フロント業務、宿泊プランの企画立案等 -
海外のホテル・レストランでマネジメント業務に10年間従事 レストランのコンセプトデザイン、宣伝・広報 月額60万円

共通しているのは、「外国語を使う」「企画する」「分析する」といった要素が職務に組み込まれていることです。単に受付に立つのではなく、そこで何をするのかが具体的に書かれています。

不許可になった6件|落ちた理由は、6件とも違います

学歴 申請された業務と不許可の理由 落ちた論点
本国の大学で経済学を専攻 主たる業務が宿泊客の荷物の運搬および客室の清掃業務。該当する業務に従事するものとは認められず 業務の中身
本国の大学で日本語学を専攻 外国人宿泊客の通訳業務。ただし、その旅館の外国人宿泊客の大半が使う言語が申請人の母国語と異なり、必要な言語能力が立証されず、母国語を用いる業務に十分な業務量がない 言語と業務量
本邦の大学で商学を専攻 駐車誘導、レストランにおける料理の配膳・片付け 業務の中身
本邦の大学で法学を専攻 フロントでの外国語を用いた予約対応や館内案内等。しかし報酬が月額約15万円で、同種業務の日本人従業員は月額約20万円。同等額以上と認められず 報酬
本邦の専門学校で服飾デザイン学科を卒業(専門士) フロントでの受付業務。専攻科目と業務との関連性が認められず 専攻との関連性
本邦の専門学校でホテルサービス・ビジネス実務を専攻(専門士) フロント業務。ただし採用後最初の2年間は実務研修としてレストランでの配膳や客室清掃に従事予定。該当しない業務が在留期間の大半を占める 研修期間の長さ

とくに2件目と5件目に注目してください。

2件目は、日本語学を学んだ方の通訳業務という、一見きれいな申請です。落ちた理由は、その旅館に来る外国人客の大半が別の言語を使っていたこと。その人の言語を使う仕事が、そもそも館内に十分なかったわけです。職務内容の作文ではなく、実際の客層と業務量が見られています。

5件目は、服飾デザイン学科を出た方のフロント受付です。フロント業務自体は許可事例にもあるのに、関連性がないとして落ちています。専門学校の専門課程は、専攻と職務内容に相当程度の関連性が求められるためです(大学卒業の場合は比較的柔軟に判断されます)。

(関連記事:同じ仕事でも不許可になる理由/店長・店長候補は技人国で大丈夫か)

3.2026年4月15日改正|ホテルフロントの接客はCEFR・B2相当の対象に名指しされました

ここからが新しい話です。

2026年4月15日以降の申請から、カテゴリー3・4の企業には提出書類が追加されています。ひとつは「所属機関の代表者に関する申告書」、もうひとつが次の資料です。

「(主に言語能力を用いて対人業務等に従事する場合)業務上使用する言語について、CEFR・B2相当の言語能力を有することを証する資料」

そして入管庁は、この対象になる場面として「翻訳・通訳やホテルフロント業務等の接客の場合等」と例示しています。宿泊業のフロントは、制度の側から名指しされた業種だということです。

誤解しやすい点その1|「N2が要件になった」わけではありません

基準省令に「日本語能力試験N2」という独立の文言が加わったわけではありません。しかし、単に提出書類が増えただけともいえません。

入管庁の別紙4は、翻訳・通訳やホテルフロントなど主に言語能力を用いる対人業務では、業務に用いる言語についてCEFR・B2相当の能力があることを実質的な前提として示しています。B2相当を立証できない場合、その業務を行える程度の能力があるとは認めない、という整理です。

誤解しやすい点その2|B2相当を示す方法は、N2だけではありません

▶ 日本語能力試験(JLPT)N2以上
▶ BJTビジネス日本語能力テストで400点以上
▶ 中長期在留者として20年以上の在留
▶ 本邦の大学卒業、または専修学校専門課程等の修了
▶ 我が国の義務教育を修了して高等学校を卒業

ただし、学歴による立証には、専攻科目と業務内容の関連性という限定が付きます。詳しくは技人国の日本語要件(N2がない社員は更新できないのか)で整理しています。

いちばん影響を受けるのは、これから採る人と、転職してきた人です

更新については、以前から同様の業務を継続している場合、原則としてこの資料の提出は不要とされています。ただし、審査上必要になれば提出を求められます。カテゴリー1・2も当初提出が省略されているだけで、業務を遂行できる言語能力そのものが不要になるわけではありません。

したがって実務上いちばん影響を受けるのは、これから採用する方と、他社から転職してきて自社で最初の更新を迎える方です。面接の段階で語学の証明の有無を確認してください。JLPTは年2回しか実施されないため、入社時期から逆算すると間に合わないことがあります。

4.宿泊業でいちばん多い不許可理由|「最初の1年は研修で、配膳と清掃も」

宿泊業の申請で、もっとも多くつまずくのがここです。

現場の感覚としては、自然な話だと思います。フロントに立たせる前に、客室も厨房も一通り経験させたい。日本人の新卒にも同じことをさせているのだから、外国人だけ特別扱いはしない——むしろ健全な発想です。

入管庁も、実務研修そのものは否定していません。別紙1「実務研修について」は、日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であること、そして在留期間中の活動を全体として捉えて、研修が在留期間の大半を占めるようなものではないことを条件としています。

問題は「在留期間」の数え方です

別紙1は、ここでいう在留期間とは、一回の許可ごとに決定される在留期間を意味するものではなく、申請人が今後本邦で活動することが想定される期間全体を指す、としています。そして例として、雇用契約が3年間のみで更新の予定がない場合には、採用から2年間の研修期間は認められない、と明記しています。

別紙5の不許可事例も、まさにこの形でした。専門学校でホテルサービスを学んだ方を、フロント業務で採用する。ただし最初の2年間は実務研修としてレストランでの配膳と客室清掃に従事する予定——該当しない業務が在留期間の大半を占めるとして、不許可です。

さらに怖いのは、会社の過去の運用が跳ね返ってくることです

フロントスタッフとして採用し、入社当初1年間は研修としてレストランの配膳と客室清掃にも従事する、という申請。落ちた理由は、申請人本人の事情ではありません。そのホテルで過去に同様の理由で採用された外国人が、当初の研修予定を大幅に超えて、引き続き配膳や客室清掃に従事していると判明したためです。

「研修だから」という説明は、一度でも実態と食い違えば、二度目からは通りません。

逆に、うまく設計された許可例もあります

専門学校で観光地理・旅行業務・セールスマーケティング・ホスピタリティ論等を履修した方が、大型リゾートホテルに総合職として採用され、シフトによりフロント・レストラン・客室の各業務を担当するという申請です。詳細を確認したところ、一部に該当しない業務が含まれていたものの、主としてフロントでの翻訳・通訳業務、予約管理、ロビーでのコンシェルジュ業務、顧客満足度分析を行うものであり、他の総合職採用の日本人従業員と同様の業務だと判明して、許可されています。

差は明確です。「一部に混ざる」のか、「大半を占める」のか。そして、日本人の総合職と同じ扱いになっているか。この2点を、採用の設計段階で決めておいてください。

5.元警視庁入管法捜査員の視点|ホテルのシフト表は、いちばん正直な資料です

私が捜査で見てきた案件のほとんどは、書類が嘘をついていたのではなく、書類の後に実態が変わっていったものでした。

宿泊業は、その典型になりやすい業種です。理由は単純で、繁忙期があるからです。団体が入った日にフロント担当がベッドメイクに回る。宴会の日に配膳を手伝う。一回一回は、誰も悪意なく行っています。

別紙5も、その点は現実的です。フロント業務の最中に急遽荷物を運ぶといった一時的な対応は、直ちに問題とされるものではないとしています。ただし、結果としてこうした業務が在留期間における主たる活動になっていれば、更新が認められない可能性があります。

実務の感覚としては、清掃や配膳を短時間であってもシフトに組み込まれるように定期的に担当させると、「臨時的な応援」ではなく通常業務と見られるリスクがあると感じます(これは公表された基準ではなく、シフト設計を考えるうえでの実務上の目安です)。

では、何によって判明するのか|シフト表と勤怠記録です

更新申請でも、退職者をめぐる調査でも、必ず出てきます。フロント担当として申請した人が、月に何日どの部署に入っていたか。班名や担当区分がそのまま残っており、口頭の説明よりはるかに明白です。

ですから、備えは記録の側から作ってください。

第一に、シフト表の担当区分を、申請した職務内容の言葉に合わせること。「フロント」「予約管理」「インバウンド対応」といった区分を実際に使い、清掃応援に入った日はその旨が残る形にする。隠すためではなく、割合を説明できるようにするためです。
第二に、研修期間を設けるなら、期間と到達目標を文書にすること。別紙1は、日本人社員を含めた入社後のキャリアステップと各段階の具体的職務内容を示す資料の提出を求めることがある、としています。口約束の「1年くらい」は資料になりません。
第三に、日本人社員との差を作らないこと。別紙1は、実務研修が外国人社員だけに設定されている場合などは、合理的な理由がある場合を除き認められない、としています。日本人の総合職と同じ研修・同じ配置であることは、有力な説明材料になります。

そして、報酬です

不許可事例には、フロントでの外国語対応という適切な職務でありながら、月額約15万円(同種業務の日本人は約20万円)で落ちたものがあります。職務が正しくても、金額で落ちます。募集要項を作る段階で、同じ仕事をしている日本人の賃金表と突き合わせてください。

地方の温泉旅館で、実際によく聞く話

これは公表資料ではなく、私がこれまで現場で見聞きしてきた範囲の話です。

地方の温泉宿泊施設で、技人国の在留資格で入った方が、日常的にベッドメイキングや客室清掃に入っている——この形は、相当な数を耳にしてきました。申請書の職務内容は「外国人宿泊客への通訳・館内案内」。ところが実際には、朝はベッドメイク、昼は館内の片付け、夕方から宴会場の配膳。フロントに立つのは、団体客が入った日だけ。

会社の言い分も、たいてい同じです。「人手が足りない」「本人もやると言っている」「日本人スタッフも同じことをしている」。どれも、在留資格の該当性を満たす理由にはなりません。

地方の旅館ほどこういった事例が多いのには、理由があります。従業員数が少なく、部署ごとの壁がない。繁忙期と閑散期の落差が大きい。そして何より、「外国人客への対応」という名目で採用しても、その業務が実際には一日のうち1時間もないことがあるからです。別紙5の不許可事例で、日本語学を専攻した方の通訳業務が「業務量が足りない」として落ちているのは、まさにこの構図です。

すべてが悪質だとは思いません。ただ、こういった外国人採用をしている会社が立件されるハードルが、明らかに以前よりも低くなってきています。

宿泊業の採用に関するご相談
求人票を出す前に、線引きを済ませておきませんか
想定する職務内容、シフトの案、賃金表、候補者の学歴と語学の証明。この4点をご用意ください。技人国で進めるのか、特定技能「宿泊」で組むのかを、元警視庁入管法捜査員の行政書士が事例に照らして切り分けます。採用してから直すより、採用前に決めるほうが、はるかに確実です。

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6.現場作業が常態化したときの会社のリスク|資格外活動と不法就労助長罪

ここまでは「申請が通るか、通らないか」の話でした。ですが、宿泊業でいちばんお伝えしたいのは、その先です。

技人国の方に清掃・配膳を常態的にさせている状態は、更新が止まるだけの問題ではありません。本人は資格外活動、会社は不法就労助長罪(入管法73条の2)の問題になり得ます。

誰が、何を問われるのか

立場 問われ得ること 主な根拠
外国人ご本人 在留資格の範囲を出た活動(資格外活動)。更新の不許可のほか、在留資格の取消しの対象にもなり得ます 入管法19条1項、22条の4第1項6号(在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていないこと。正当な理由がある場合を除きます)
会社(担当者個人) 不法就労助長罪。資格外の業務に就かせた側が処罰の対象になります 入管法73条の2第1項
会社(法人) 両罰規定により、法人にも罰金が科され得ます 入管法76条の2

「知らなかった」は、通りません

入管法73条の2第2項は、在留資格の範囲を出ていることを知らなかった場合でも、そのことについて過失があれば処罰を免れないという趣旨を定めています。「本人が希望した」「現場が勝手にやっていた」という説明は、免責の理由になりません。

2027年4月1日から、法定刑が引き上げられます
令和6年法律第60号により、不法就労助長罪の罰則は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)に引き上げられます。金額よりも、法定刑が5年に上がることの実務上の意味のほうが重いと、私は見ています。

元警視庁入管法捜査員として|端緒は、たいてい社外から来ます

「うちの旅館に捜査が入るはずがない」と思われるかもしれません。ですが、端緒は会社の外から来ます。辞めた従業員の申告、同僚からの相談、別件の職務質問、求人票と実態の食い違い。そして最初に突き合わせられるのが、申請書の職務内容とシフト表です。

逆に言えば、いつ、誰が、何を確認し、どう説明したのかという記録が残っていることが、会社を守ります。次章の就労資格証明書は、その記録の一つになります。

(関連記事:不法就労助長罪という会社のリスク/罰則、両罰規定、2027年4月の厳罰化まで詳しく解説しています。社員が逮捕されたときの初動もあわせてどうぞ)

7.宿泊業の相談ルートは2本|就労資格証明書による棚卸しと、特定技能「宿泊」への変更

では、どう手を打つか。当事務所で宿泊業のご相談をお受けするとき、入口は2本しかありません。これから採る人か、いま在籍している人か。この2つで、やることがまったく違います。

ルート①(これから採る人)|採用前の適合診断 → 技人国の在留資格認定証明書交付申請・変更許可申請
ルート②(いま在籍している人)|業務の棚卸し → 就労資格証明書の交付申請で、いまの職務が在留資格の範囲内かを確認

ルート①|これから採る人は、求人票を出す前に線を引く

ここまで見てきたとおり、宿泊業の技人国は、職務内容・学歴・報酬・研修期間の4点を、採用前に設計できるかで決まります。想定する職務内容、シフトの案、賃金表、候補者の学歴と語学の証明。この4点がそろえば、通るか通らないかは事前にかなりの精度で見立てが立ちます。

内定を出してから「この業務では難しい」と分かるのが、いちばん損です。本人の人生にも、現場の人員計画にも穴が空きます。

ルート②|いま在籍している人は、就労資格証明書で棚卸しする

こちらが、宿泊業でいま最も使っていただきたい手続です。

就労資格証明書(入管法19条の2)の交付申請は、いまの職務が現在の在留資格で行える活動に当たるかどうかを、在留期限に追われない時点で確認できる手続です。条文は「交付することができる」という書き方で、申請は任意。取得していなくても在留資格の範囲内であれば適法に働けますし、交付されても在留期間は1日も延びません。

では、何のために使うのか。時間と、記録のためです。

交付されれば|その後の職務内容等に変更がない限り、次回更新で在留資格該当性を説明するうえで有力な資料になります。(ただし、更新そのものを保証するものではありません)
交付されなければ|まだ期限まで日があるうちに、配置転換、業務設計の見直し、特定技能への変更といった選択肢を検討できます。不許可通知を受け取ってから動くのとは、残り時間がまるで違います。

ただし、順序が大事です。「とりあえず就労資格証明書を出しましょう」ではありません。申請は、会社と本人が現在の職務内容を自ら入管に開示する行為でもあります。まず棚卸しをして見立てを立て、そのまま出すか、先に業務設計を直してから出すかを決める。この順序です。

それでも出さないほうがよいのか、と聞かれれば、私の考えは逆です。放置しても問題は消えず、次の更新のとき、しかも打つ手のない時点で表に出るだけだからです。

(関連記事:就労資格証明書は取るべきか/制度の基本、取るべきケースの仕分け、手数料と処理期間はこちらで詳しく解説しています。現場作業が多いと、なぜ止まるのか/棚卸しの手順と期限別の時間割はこちらです)

就労資格証明書交付申請に関するご相談(在籍中の社員向け)
「いま出しておくべきか」を、在留期限から逆算して整理します
在留カード、雇用契約書、前回申請時の業務内容説明書、直近1か月のシフト表、職務分掌、賃金表をご用意ください。現在の業務を棚卸ししたうえで、いま就労資格証明書を申請すべき事案か、先に業務設計を見直すべき事案かを切り分けてご説明します。清掃・配膳が常態化している場合は、不法就労助長罪のリスクも含めて率直にお伝えします。

就労資格証明書の申請について相談する ▶

就労ビザ申請サポート(技人国・就労資格証明書)のページへ移動します

棚卸しの結果、清掃・配膳が中心だったら|特定技能1号「宿泊」分野

業務を棚卸しした結果、「どう見てもフロント以外が半分を超える」という結論になることもあります。その場合、無理に技人国で押し通すのは得策ではありません。

宿泊業には、特定技能1号の「宿泊」分野があります。入管庁の案内では、宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務が対象とされています。清掃や配膳が業務に相当量含まれる働き方であれば、制度としてはこちらが妥当です。

ただし、技人国とは必要なものが違います。技能試験と日本語試験の合格(または技能実習2号の良好修了など)、分野別の協議会への加入、支援計画の作成と支援体制の整備。登録支援機関に委託する場合はその費用も見込む必要があります。関連業務の範囲を含め、要件は分野別の運用方針・運用要領でご確認ください。

(関連記事:飲食部門での同じ論点は店長・店長候補は技人国で大丈夫かもあわせてご覧ください)

8.ホテル・旅館の技人国採用についてのよくある質問

Q1.フロント担当として採用しますが、繁忙期だけ清掃を手伝わせるのは駄目ですか。

A.一時的に該当しない業務を行う場面は、直ちに問題とされるものではないとされています。問題になるのは、それが在留期間の主たる活動になっている場合です。年間を通じた割合で説明できる状態にしておいてください。シフト表で追えることが重要です。

Q2.日本語能力試験のN2がない人は、もう採用できませんか。

A.N2以外にも、BJTで400点以上など、CEFR・B2相当を示す方法があります。日本での長期在留歴や一定の国内学歴による立証方法も示されていますが、学歴で示す場合は専攻と業務の関連性など条件があります。カテゴリー1・2は資料の当初提出が省略されていますが、必要な言語能力まで免除されるわけではありません。

Q3.専門学校を出た人を採用したいのですが、注意点はありますか。

A.専攻科目と業務内容の関連性が、大学卒業の場合より厳しく見られます。ホテルサービスや観光、翻訳・通訳、ビジネス実務といった学科であれば説明しやすく、服飾デザイン学科でフロント受付という申請が不許可になった事例もあります。採用前に、履修科目とシラバスを確認してください。

Q4.外国人客が多い旅館です。通訳担当として採用できますか。

A.客層の言語と、その方の言語が一致しているかを確認してください。日本語学を専攻した方の通訳業務でありながら、その旅館の外国人客の大半が別の言語を使っていたために、業務量が足りないとして不許可になった事例があります。月に何件の対応が見込まれるのかを、数字で説明できるようにしておくと安全です。

Q5.いま在籍している社員が、実際には清掃中心になっています。どうすればよいですか。

A.まず業務を棚卸しし、申請時の職務へ戻すのか、特定技能への変更を検討するのかを決めてください。就労資格証明書の交付申請で、予定する業務が在留資格の範囲内かを確認する方法もあります。法令上の「1年前点検」という期限はありませんが、配置変更や資格変更には時間がかかるため、当事務所では年1回、更新期限より十分前の点検を実務上の目安としています。

Q6.技人国の社員にベッドメイキングをさせていたことが後で分かったら、会社も罰せられますか。

A.不法就労助長罪(入管法73条の2)の対象になり得ます。同条2項は、在留資格の範囲を出ていることを知らなかった場合でも、過失があれば処罰を免れないという趣旨を定めており、両罰規定(76条の2)により法人にも罰金が科され得ます。2027年4月1日からは法定刑が5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に引き上げられます。気づいた時点で業務を戻し、就労資格証明書の交付申請などで記録を残してください。放置している期間が長いほど、説明が難しくなります。

9.まとめ|宿泊業の技人国採用は、求人票とシフト表で決まります

▶ ホテル・旅館のフロントは技人国の対象になり得ます。入管庁自身も許可事例を示していますが、職務内容、学歴・職歴、報酬、業務量などの個別審査があります。
▶ 合否を分けるのは、フロント以外の業務の割合、学歴・経歴との関連性、日本人と同等額以上の報酬。研修期間は「今後活動が想定される期間全体」の中で見られ、過去の運用実績も審査に影響します。
▶ 2026年4月15日以降、カテゴリー3・4では、主に言語能力を用いた対人業務についてCEFR・B2相当の資料が求められます。ホテルフロントの接客は、その対象として名指しされています。
▶ そして、清掃・配膳が常態化していれば、更新が止まるだけでなく、会社が不法就労助長罪に問われ得ます。2027年4月1日からは法定刑が5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に引き上げられます。
▶ 打つ手は2本です。これから採る人は採用前の適合診断と技人国の申請、いま在籍している人は就労資格証明書による棚卸し。

宿泊業は、公表されている判断材料が比較的多い業種です。求人票・雇用契約書・シフト表・賃金表の内容と、実際の運用が一致しているかを、申請前に確認してください。書類を整えるだけでなく、そのとおりに働ける人員配置が必要です。

採用してから直すのは、採用前に決めるより何倍も大変です。不許可になれば、内定を出した方の人生にも、現場の人員計画にも穴が空きます。そして、すでに清掃中心になっている社員がいるなら、それは次の更新を待つ話ではなく、いま止めるべき状態です。

当事務所では、宿泊業の在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請、就労資格証明書の交付申請、採用前の業務内容の適合診断をお受けしています。料金とサポート範囲は料金表と外国人雇用 企業サポートで公開しています。

これから採用する方がいる場合|職務内容と想定シフトの案、賃金表、候補者の学歴・語学証明をお持ちください。就労ビザ申請サポートで、求人票を出す前に線引きをします。
いま在籍している社員がいる場合|在留カード、雇用契約書、前回申請時の業務内容説明書、直近1か月のシフト表、職務分掌、賃金表をお持ちください。就労資格証明書の交付申請を出すべき事案か、先に業務設計を見直すべき事案かを切り分けます。

不許可通知や、外部からの申告があってからではなく、まだ何も起きていない今が、動くタイミングです。

【法令・情報の根拠】

【実務上の目安として参照した専門家解説】

宿泊業の技人国審査に関する行政書士の実務解説(定期的にシフトへ組み込まれた清掃・配膳は、時間が短くても通常業務と評価されるおそれがあるという整理)を、シフト設計の目安として参照しました。公表された時間割合の基準ではなく、個別の許否は公式資料と実際の職務構成に基づいて判断されます。
また、本文中の「地方の温泉旅館で実際によく聞く話」は、筆者が現場で見聞きしてきた範囲の事例を一般化して記述したものであり、特定の施設や事案を指すものではありません。公表された統計・調査結果でもありません。

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この記事を書いた人

TAMAフロンティア行政書士事務所 代表

毛呂 敦(もろ あつし)

行政書士 毛呂敦 入管業務を専門とする行政書士。警視庁で約20年間勤務し、うち約10年を国際捜査官として入管法実務に従事。現場で得た知見を活かし、東京・多摩地区(ご相談場所は立川駅)を拠点に、外国人のビザ申請と企業の外国人雇用をサポートしています。
行政書士(登録番号 第26081692号)
外国人雇用管理主任者
元警視庁 国際捜査官
TOPIK(韓国語能力試験)上級
技能実習監理責任者講習 受講済



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