住民税を滞納したままビザの更新はできる?|督促状が来ている場合
元警視庁入管法捜査員の行政書士が解説
滞納したことより、滞納が分かったあとに何をしたかで結論が分かれます
──外国人ご本人向け/分納中・督促状が届いている方へ
こういったご相談がたまにあります。理由としては、更新の審査で税金の納付状況が以前より細かく見られるようになったからです。
先に結論を申し上げます。住民税の滞納だけで、在留期間の更新が機械的に不許可になるわけではありません。ただし、滞納は更新の許否を判断する際の消極的な事情です。金額、期間、納付能力、滞納後の対応などを含めて総合判断されるため、「分納中なら必ず許可」「この金額なら安全」と言い切れる線引きはありません。
そして、この分野は2026年に入って動きがありました。更新の審査基準を示すガイドラインが令和8年(2026年)6月に改正され、納税に関する項目の書きぶりが、はっきりと厳しくなっています。
私は行政書士になる前、警視庁で約20年間勤務し、そのうち約10年間は入管法違反事件の捜査に従事してきました。その経験からお伝えできるのは、入管が見ているのは「滞納したかどうか」だけではないということです。滞納が分かったあと、その方がどう動いたか。そこが結論を分けます。
目次
この記事のポイント【先に結論】
1.まず、住民税の滞納額を数字で確認する|納税証明書と課税証明書
ご相談の場で「たぶん20万円くらい」とおっしゃる方いますが、実際に証明書を取ると金額が違っていることがあります。延滞金が加算されているからです。
取るのは2種類です
| 証明書 | 記載される内容 |
|---|---|
| 納税証明書 | 納めるべき額、納めた額、そして未納額が記載されます。入管が見るのはここです。 |
| 課税証明書(非課税証明書) | 1年間の所得と税額が記載されます。収入の裏づけになります。 |
いずれも、その年の1月1日に住民登録があった市区町村が発行します。年の途中で引っ越した方は、前の市区町村に請求することになります。
なお入管庁の案内では、1年間の総所得と納税状況の両方が記載された証明書であれば、いずれか一方の提出でも構わないとされています。ここでは、ご自身の状況を正確に把握するために2つ取ることをお勧めしています。
見落とされがちなのが、延滞金です
本税だけを納めても延滞金が残っていれば、未納額として扱われることがあります。「全部払ったはずなのに未納と言われた」という相談には、これが関係していることが多いです。ただし、延滞金の取扱いや証明書上の表示方法は自治体によって異なります。窓口で、延滞金を含めた残額を必ず確認してください。
なぜ滞納が起きるのか|多いのは「普通徴収への切り替わり」です
住民税には、給与から天引きされる特別徴収と、自分で納付書で納める普通徴収があります。会社員の方は通常、特別徴収です。
滞納が生まれるのは、そこから外れたときです。転職して次の会社の天引きが始まるまでの間、退職した年の残りの住民税、アルバイトを掛け持ちした分、独立して個人事業になったとき。納付書が自宅に届くのに、日本語で書かれた薄い封筒なので、開封されないまま放置される。これが典型です。
なお、会社が給与から住民税を天引きしていたのに、市区町村へ納入していなかったというケースもあります。特別徴収では、給与から引き去った住民税を自治体へ納入する義務を負うのは、特別徴収義務者である会社です。ただし、会社が納入していないために、本人が納税証明書を取得できないといった不利益が生じることがあります。給与明細など、天引きされていた事実が分かる資料を必ず残してください。
(関連記事:資料提出通知書が届いたら/辞めた後、いつまでに動くべきか)
2.「住民税を滞納すると在留資格が取り消される」は正確ではない
ここが、多くの記事で混同されているところなので、順番に切り分けます。
現行制度では、滞納それ自体が直ちに取消し・退去強制となるわけではありません
在留資格の取消事由(入管法22条の4)と退去強制事由(同法24条)は法律で定められています。2026年9月時点では、一般の在留資格について、住民税を滞納した事実それ自体を理由に直ちに取消し・退去強制とする規定ではありません。もっとも、滞納に関連して別の違法行為や虚偽申請があれば、その問題は別に判断されます。
ですから、滞納しているから在留カードを取り上げられる、明日にも帰国させられる、ということにはなりません。まず、そこは安心してください。
関係してくるのは「更新」です
在留期間の更新は、入管法21条3項により、法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に限って許可する仕組みです。最高裁も、在留の許否について国に広い裁量を認めています(マクリーン事件・最高裁大法廷 昭和53年10月4日判決)。
その裁量の中身を示したのが、ガイドラインです。8つの項目が挙げられており、その7番目が「納税義務等を履行していること」です。
以前の書きぶりは「刑を受けている場合」が例として挙がっているだけで、単なる滞納がどう扱われるのかは読み取りにくいものでした。今は、刑事処分がなくても未納そのものが評価対象だと、はっきり書かれています。ここは押さえておいてください。
(関連記事:不許可からの立て直し方/永住申請と年金の落とし穴)
3.どのくらいの滞納が、ビザの更新にどのくらい響くのか|4つの判断軸
最も知りたいのはここだと思いますが、「◯円以上でアウト」という基準は公表されていません。ガイドラインの言葉も「高額」「長期間」「悪質」であって、具体的な数字ではありません。
そのうえで、実務で見ている軸を整理します。
| 判断軸 | 比較的軽く見られる状態 | 重く見られる状態 |
|---|---|---|
| ① 金額 | 現年度分の1期が数万円残っているだけ | 複数年度にわたって数十万円が積み上がっている |
| ② 期間 | 今年の分がまだ途中 | 3年前の分が手つかず(長期間の未納そのものがガイドラインの文言に該当してきます) |
| ③ 役所への対応 | 窓口に行って分納の相談をしている | 督促状や催告書が届いているのに何もしていない(ここが「悪質かどうか」の分かれ目です) |
| ④ 繰り返しか | 今回が初めて | 前回の更新でも同じ指摘を受けて、今回もまた未納がある |
督促と差押えの流れも知っておいてください
納期限までに納めないと、市区町村は督促状を発します。法律上は、原則として納期限後20日以内に発することとされています(地方税法329条1項。特別の事情がある市町村は条例で異なる期間を定められるため、実際の時期は自治体によって幅があります)。
そして、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納されないときは、財産を差し押さえなければならないと定められています(同法331条1項)。
実際には、すぐに差押えが行われるわけではなく、催告を重ねる自治体がほとんどです。しかし、法律上はその段階に入っているということです。給与や預金が差し押さえられれば、勤務先に知られます。会社に知られたくないという理由で放置するのは、順番が逆です。
許可されても、在留期間が短くなることはあります
実務上は、更新自体は許可されても、前回より短い在留期間が付与されることがあります。ただし、在留期間は納税状況だけで決まるものではなく、活動内容、所属機関、在留状況などを含む総合判断です。期間が短くなったことだけから「税の滞納が理由だった」と断定はできません。更新できた場合も、未納をそのままにせず、次回申請までに是正を進めてください。
永住者の方は、2027年4月1日施行の改正制度にご注意ください
令和6年法律第60号(一部の規定を除き2027年4月1日施行)により、故意に公租公課(払うべき税金)を支払わないことが、永住者の在留資格の取消事由に加わります。
入管庁のQ&Aは、「故意」を、支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしない場合——具体的には、支払能力があるにもかかわらず支払をしない場合と説明しています。病気や失業などやむを得ない事情による不払いは該当しないという整理です。
また、取消事由に該当したとしても、自動的に取り消されるわけではありません。Q&Aは「取消事由に該当するとしても、取消しなどするかどうかは、不払に至った経緯や督促等に対する永住者の対応状況など個別具体的な事情に応じて判断する」としています。引き続き在留することが適当でないと認める場合を除き、法務大臣が職権で永住者以外の在留資格(多くは「定住者」)への変更を許可するとも説明されています。
4.分納・徴収猶予・換価の猶予の使い方|役所との合意があると説明が変わります
「一括では払えません」という方に、私がお伝えしていることがあります。払えないことより、何も言わずに放置していることのほうが、審査ではマイナスに評価されます。
まずは窓口で分納の相談を
多くの自治体が、納税相談の窓口で分割納付に応じています。収入と支出の状況を伝え、毎月いくらなら払えるかを具体的に示すことが必要です。相談の結果、納付計画が作られます。
ただし注意点があります。事実上の分納は、法律上の「猶予」とは別のものです。分納中でも督促状は出ますし、資力があると判断されれば差押えが行われることもあります。自治体もその旨を明記しています。
法律上の猶予制度もあります
| 制度 | 使える場面 | 期間 |
|---|---|---|
| 徴収猶予 (地方税法15条) |
災害、盗難、本人や家族の病気・負傷、事業の廃止・休止、事業の著しい損失などの事情がある場合 | 原則1年以内 延長で最長2年 |
| 換価の猶予 (同法15条の6) |
一時に納付することで事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある場合。申請は原則として納期限から6か月以内(同法15条の6の2) | 1年以内 延長で最長2年 |
いずれも、認められれば延滞金の全部または一部が免除されます。金額によっては担保が必要です。手続きの細かい運用は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の案内を必ず確認してください。
入管に対して、何が言えるようになるか
ここが実務上のポイントです。分納の合意書や猶予の許可通知書は、滞納を放置せず、是正に動いていることを示す資料になります。無収入で払えなかった時期があるなら、その理由も含めて、事実として説明できるようになります。ただし、これらの書類があれば不利益な評価を必ず避けられる、という公式基準はありません。
もちろん、未納が残っている以上、証明書には未納額が記載されます。それでも、「事情があって遅れているが、役所と合意した計画に沿って払い続けている」という状態と、「督促を無視している」という状態は、同じ滞納ではありません。こういった事情を理由書で書き分けられるかどうかも、私たちの専門家の役割です。
5.更新申請までにやること、やってはいけないこと
可能なら、申請前に完納する
在留期限に余裕があるなら、延滞金を含めて完納し、改めて納税証明書を取得するのが最も分かりやすい対応です。もっとも、無理な借入れで生活を破綻させるべきではありません。一括納付が難しいときは、市区町村の納税相談を利用してください。
期限が迫っていて完納が間に合わないなら、まず役所の納税相談を受けてください。どの年度から充当するかを含め、納付計画は窓口と相談して決めるのが確実です。そのうえで、計画に沿って滞納額を可能な限り減らし、合意の内容を書面で残してから申請します。
揃えておく資料
やってはいけないこと|その1|黙って申請する
証明書を出す以上、未納は必ず伝わります。何の説明もなければ、入管は事実だけを見て判断します。資料提出通知書が届いてから慌てて説明するより、最初から理由書で先に説明しておくほうが、はるかに印象は良くなります。
やってはいけないこと|その2|事実と違う説明をする
申請書には、事実に反する記載をした場合に不利益な取扱いを受けることがある旨の注意書きがあります。滞納の問題が、入管に虚偽を述べた問題にすり替わると、取り返しがつきません。
(関連記事:不起訴なら申請書は「無」でいいか/申請書の記載をめぐる考え方を整理しています)
6.住民税の滞納とビザ更新についてのよくある質問
Q1.住民税を滞納したまま更新申請をしたら、必ず不許可ですか。
A.必ず不許可になるわけではありません。ただし、滞納は消極的な要素です。金額・期間・納付能力・滞納後の対応などを総合して判断されます。複数年度分を放置している場合は、より慎重な審査を受けると考えて準備してください。
Q2.分割で払っている途中です。申請は待ったほうがいいですか。
A.在留期限は待ってくれません。期限内に申請することが最優先です。そのうえで、分納の合意内容と、実際に払い続けている記録を添えて説明してください。何もせずに期限を過ぎるほうが、はるかに深刻です。
Q3.督促状が届いています。放置するとどうなりますか。
A.法律上、督促状を発した日から10日を経過して完納がなければ、差押えの対象になります(地方税法331条1項)。実際の運用は自治体により幅がありますが、預金や給与が差し押さえられれば勤務先に知られます。すぐに窓口へ相談してください。
Q4.国民健康保険料の未納も、住民税と同じように見られますか。
A.はい。2026年6月改正後のガイドラインは、国民健康保険料など法令によって納付することとされているものについても、高額・長期の未納は同様に扱うと明示しています。年金保険料も、特に永住申請では厳しく見られます。
Q5.会社が住民税を天引きしていたのに納めていませんでした。私の責任になりますか。
A.給与から住民税が実際に天引きされていたのであれば、市区町村へ納入する義務を負っているのは特別徴収義務者である会社です。ただし、会社が納入していないために、本人が納税証明書を取得できないなどの不利益が生じることがあります。給与明細など、天引きされていたことが分かる資料を残し、会社に早急な納入と是正を求めてください。更新申請では、必要に応じて会社側の事情を説明する資料も用意します。
7.まとめ|住民税の滞納は、放置した方が審査でマイナスになる
入管が見ているのは、滞納した事実だけではありません。滞納が分かったあと、その方が役所に行ったのか、何も言わずに封筒を置いたままにしたのか。その差が、書類に残ります。
滞納があるまま更新期限が近づいている方、督促状が届いて不安な方は、納税証明書・課税証明書と在留カード、届いている督促状や催告書をご用意のうえ、ご相談ください。今どの段階にいて、申請までに何をどこまで整理できるのかを、一緒に組み立てます。
料金とサポート範囲は料金表で公開しています。永住申請・帰化申請をお考えの方は、永住ビザ申請サポート・帰化申請サポートもあわせてご覧ください。納税の記録は、更新より永住・帰化でさらに厳しく見られます。
ビザの更新・審査について、あわせて読みたい記事
【法令・情報の根拠】
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(平成20年3月策定、最終改正 令和8年6月。「納税義務等を履行していること」の項)
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(第21条第3項 在留期間の更新、第22条の4 在留資格の取消し、第24条 退去強制事由)
- 出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」(故意に公租公課の支払をしないことの意味、取消しの判断、職権による在留資格変更)
- 出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」(令和6年法律第60号。令和6年6月21日公布、一部の規定を除き令和9年4月1日施行)
- e-Gov法令検索「地方税法」(第15条 徴収猶予、第15条の6 換価の猶予、第15条の6の2 申請による換価の猶予、第329条第1項 督促、第331条第1項 滞納処分)
- 京都市「延滞金について」(令和8年中の延滞金の割合=納期限の翌日から1か月までが年2.8%、それ以降が年9.1%。割合は毎年見直されます)
- 最高裁大法廷 昭和53年10月4日判決(マクリーン事件。在留の許否についての国の裁量)
【実務上の目安として参照した専門家解説】
住民税などの未納は更新審査で重いマイナス材料になり得るため、未納額、発生の経緯、現在の納付状況を整理して説明すべきだという行政書士の実務上の指摘を参照しました。これは公表された金額基準や許否基準ではありません。延滞金の割合・証明書の記載方法・納税相談の運用は自治体ごとに異なりますので、お住まいの市区町村の案内をご確認ください。
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TAMAフロンティア行政書士事務所 代表
毛呂 敦(もろ あつし)
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入管業務を専門とする行政書士。警視庁で約20年間勤務し、うち約10年を国際捜査官として入管法実務に従事。現場で得た知見を活かし、東京・多摩地区(ご相談場所は立川駅)を拠点に、外国人のビザ申請と企業の外国人雇用をサポートしています。 |
